
「空いている倉庫で他社の商品を預かりたい」
「取引先の商品を一時的に保管している」
「保管料や管理料を受け取って荷物を預かっている」
「タイヤ交換サービスに付随して、シーズン外のタイヤを預かっている」
このような場合に、倉庫業登録が必要になるのかどうか、判断に迷う事業者の方は少なくありません。
倉庫業登録が必要かどうかは、単に「倉庫を持っているか」「荷物を置いているか」だけで決まるものではありません。重要なのは、他人の物品を、寄託を受けて、倉庫で保管する事業に該当するかどうかです。
国土交通省は、倉庫業について「寄託を受けた物品を倉庫において保管する事業」と説明しており、倉庫業を営む場合には倉庫業法に基づく登録が必要とされています。
また、倉庫業法第3条でも、倉庫業を営もうとする者は国土交通大臣の登録を受けなければならないと定められています。
この記事では、倉庫業登録が必要になりやすいケース、不要と考えられるケース、判断に迷いやすいポイントについて、事業者向けにわかりやすく解説します。
倉庫業とは何か
倉庫業とは、簡単にいうと、他人の物品を預かり、倉庫で保管する事業です。
たとえば、物流会社が荷主の商品を預かって保管する場合や、外部倉庫として他社の商品・原材料・在庫を保管する場合などが典型例です。
一方で、自社の商品や資材を自社倉庫で保管しているだけであれば、通常は倉庫業登録の問題にはなりません。
つまり、ポイントは「倉庫を使っているか」ではなく、他人の物品を事業として預かっているかどうかです。
また、契約書や請求書の名目が「保管料」ではなく「管理料」「スペース利用料」「業務委託料」などになっていたとしても、実態として他人の物品を預かって保管している場合には、倉庫業登録の要否を確認する必要があります。
倉庫業登録が必要になりやすいケース
次のようなケースでは、倉庫業登録が必要になる可能性があります。
他社の商品・原材料・在庫を預かる場合
製造業者、卸売業者、小売業者、EC事業者などから商品や在庫を預かり、一定期間保管する場合は、倉庫業に該当する可能性があります。
特に、保管料を受け取って継続的に保管する場合には、単なる一時的な預かりではなく、保管事業として判断される可能性があるため注意が必要です。
物流会社が荷主の商品を保管する場合
運送業務に関連して、荷主の商品を一時的に保管する場面があります。
単なる輸送の前後に発生する短時間の一時保管であれば、倉庫業登録までは不要と考えられる場合もあります。
しかし、荷主の商品を一定期間保管し、保管料を受け取るような形態になると、倉庫業登録が必要かどうかを慎重に確認する必要があります。
EC事業者の商品を外部倉庫として預かる場合
EC事業者の商品を預かり、在庫管理や出荷前保管を行う場合も、倉庫業登録の検討が必要です。
近年は、ネットショップやD2C事業者向けに、商品の保管、梱包、発送をまとめて請け負うサービスも増えています。
このような場合、単なる作業代行ではなく、他人の物品を倉庫で保管する実態があるため、事前に確認しておくことが重要です。
空き倉庫を活用して他社の荷物を保管する場合
自社で使っていない倉庫やスペースを活用して、他社の荷物を預かる事業を始める場合も注意が必要です。
「倉庫を貸しているだけ」と考えていても、実態として物品の保管を引き受けている場合には、賃貸借なのか、寄託による保管なのかを整理する必要があります。
冷蔵品・冷凍品・危険物などを預かる場合
冷蔵品、冷凍品、危険物などを預かる場合は、通常の物品保管よりも施設や設備面での確認が重要になります。
倉庫業登録を受けるためには、保管する物品に応じた倉庫施設の基準を満たす必要があります。
また、倉庫ごとに一定の要件を備えた倉庫管理主任者を選任することなども必要とされています。
倉庫業登録が不要と考えられるケース
一方で、荷物を保管しているからといって、すべての場合に倉庫業登録が必要になるわけではありません。
次のようなケースでは、倉庫業登録は不要と考えられる場合があります。
自社の商品・資材を保管している場合
自社の商品、部品、原材料、工具、資材などを自社倉庫で保管している場合は、原則として倉庫業登録の対象にはなりません。
たとえば、建設会社が自社の資材や工具を保管している場合、製造業者が自社製品を出荷まで保管している場合、小売業者が自社在庫を保管している場合などです。
このようなケースでは、他人の物品を預かっているわけではないため、通常は倉庫業登録の問題にはなりません。
本業に付随して一時的に顧客の物を預かる場合
修理、整備、加工、販売などの本業に付随して、顧客の物を一時的に預かる場合も、倉庫業登録までは不要と考えられる場合があります。
たとえば、自動車整備工場やタイヤ販売店が、タイヤ交換サービスに付随して、顧客のシーズン外タイヤを預かるケースです。
このようなタイヤ保管サービスは、一般的な営業倉庫とは性質が異なります。
整備やタイヤ交換サービスに付随する保管として行われている場合には、倉庫業登録までは不要と考えられる余地があります。
ただし、注意点もあります。
タイヤ保管サービス自体を独立した事業として大規模に行っている場合や、長期間・多数の顧客から有償で預かっている場合には、実態に応じた確認が必要です。
「整備業に付随しているから絶対に登録不要」とまでは言い切れないため、事業内容や契約内容をもとに判断する必要があります。
店舗や施設の利用に伴って一時的に荷物を預かる場合
飲食店、ホテル、店舗、イベント会場などで、利用者の荷物を一時的に預かる場合も、通常は倉庫業とは性質が異なります。
このようなケースは、施設利用やサービス提供に伴う一時的な預かりであり、他人の物品を倉庫で保管する事業とは異なると考えられます。
倉庫業登録が必要かどうかを判断する5つのポイント
倉庫業登録が必要かどうかは、形式的な名称だけでなく、実態をもとに判断する必要があります。
判断に迷う場合は、次の5つのポイントを確認すると整理しやすくなります。
1. 預かる物は他人の物品か
まず確認すべきなのは、保管している物が自社の物なのか、他人の物なのかです。
自社の商品、原材料、資材、工具などを保管しているだけであれば、通常は倉庫業登録の対象にはなりません。
一方で、取引先、荷主、顧客など、他人の物品を預かっている場合には、倉庫業登録の要否を確認する必要があります。
2. 保管そのものに対価が発生しているか
保管料、管理料、スペース利用料など、保管に関連する対価を受け取っているかどうかも重要です。
名称が「保管料」でなくても、実態として物品を預かることの対価を受け取っている場合には、注意が必要です。
3. 保管が本業に付随するものか、独立したサービスか
タイヤ交換、修理、整備、加工、配送などの本業に付随して一時的に預かっているのか、それとも保管自体を独立したサービスとして提供しているのかも大きな判断ポイントです。
本業に付随する一時的な預かりであれば、倉庫業登録までは不要と考えられる場合があります。
しかし、保管サービス自体を独立して提供し、継続的に対価を得ている場合には、登録の要否を確認する必要があります。
4. 継続的・反復的に行っているか
たまたま一時的に預かっただけなのか、事業として継続的・反復的に行っているのかも重要です。
継続的に複数の顧客から荷物を預かり、保管料を受け取っている場合には、倉庫業に該当する可能性が高まります。
5. 保管場所が倉庫として利用されているか
保管場所が、倉庫、保管スペース、冷蔵・冷凍設備などとして継続的に利用されているかも確認が必要です。
単に一時的に置いているだけなのか、物品を保管するための施設として運用しているのかによって、判断が変わる可能性があります。
倉庫業登録が必要か迷いやすいケース
ここでは、実務上よくある迷いやすいケースを整理します。
空き倉庫を他社に使わせるだけなら登録は不要ですか?
単に建物やスペースを賃貸しているだけであれば、倉庫業登録の問題とは別に考えられる場合があります。
ただし、荷物の保管管理を引き受けている場合や、物品を預かる契約になっている場合には、倉庫業登録が必要かどうかを確認する必要があります。
「場所を貸しているだけ」なのか、「荷物を預かって保管している」のかを整理することが重要です。
保管料ではなく管理料という名目なら登録不要ですか?
名目だけで判断することはできません。
請求書上は「管理料」「業務委託料」「スペース利用料」となっていても、実態として他人の物品を預かり、倉庫で保管している場合には、倉庫業登録の要否を確認する必要があります。
物流業務の前後に一時保管する場合はどうですか?
輸送の前後に短時間発生する一時的な保管であれば、倉庫業登録までは不要と考えられる場合があります。
一方で、荷主の商品を一定期間保管し、保管料を受け取るような場合には、単なる輸送の付随業務ではなく、保管事業として評価される可能性があります。
タイヤ交換に付随して顧客のタイヤを預かる場合はどうですか?
自動車整備工場やタイヤ販売店が、タイヤ交換サービスに付随して、顧客のシーズン外タイヤを預かる場合は、倉庫業登録までは不要と考えられる余地があります。
ただし、タイヤ保管サービスを独立した事業として行っている場合や、保管業務の規模が大きい場合には、事前に確認することをおすすめします。
EC商品の保管と発送作業を請け負う場合はどうですか?
EC商品の保管、在庫管理、梱包、発送作業をまとめて請け負う場合には、倉庫業登録が必要かどうかを確認する必要があります。
特に、他社の商品を一定期間預かり、保管料や管理料を受け取っている場合には注意が必要です。
無料で預かっている場合は登録不要ですか?
無料で一時的に預かっている場合は、倉庫業登録の対象になりにくいと考えられます。
ただし、他の料金に保管の対価が含まれている場合や、実質的に保管サービスとして提供している場合には、無料という形式だけで判断することはできません。
登録が必要な保管業務を無登録で行うリスク
倉庫業登録が必要な事業形態であるにもかかわらず、登録を受けずに保管業務を行うと、法令上の問題が生じる可能性があります。
また、行政上の問題だけでなく、取引先との契約、事故発生時の責任、保険対応、金融機関や取引先からの信用などにも影響するおそれがあります。
特に、他人の物品を預かる業務では、火災、盗難、破損、紛失などが発生した場合の責任関係が問題になりやすいです。
大切なのは、過度に不安になることではなく、自社の保管形態が倉庫業登録の対象になるのかを事前に確認しておくことです。
事業を開始してから問題になるよりも、契約前・営業開始前の段階で確認しておく方が、結果的にリスクを抑えやすくなります。
倉庫業登録を検討する際に確認したい資料・ポイント
倉庫業登録が必要かどうかを確認する際には、次のような資料や情報を整理しておくと、判断がしやすくなります。
- 保管する物品の内容
- 物品の所有者
- 荷主・顧客との契約内容
- 保管料・管理料・請求名目
- 保管期間
- 保管場所の所在地
- 倉庫の面積・構造・設備
- 建物図面
- 建築確認関係書類
- 検査済証
- 登記事項証明書
- 賃貸借契約書または使用権限を示す資料
- 倉庫管理主任者候補者の有無
- 冷蔵・冷凍・危険物など特殊な保管物の有無
倉庫業登録を受けるためには、保管する物品に応じた施設基準を満たす倉庫であることや、倉庫ごとに倉庫管理主任者を選任することなどが必要とされています。
そのため、単に「登録申請書を出せばよい」というものではなく、建物の構造、用途、図面、使用権限、管理体制などを含めて確認する必要があります。
倉庫業登録は、想定より時間がかかることがあります
倉庫業登録を実際に進める場合、申請書を作成するだけでなく、倉庫が各要件を満たしているか、施設基準を満たしていることを示す資料が揃うかを確認する必要があります。
そのため、登録までには想定以上に時間がかかることがあります。
特に、次のような確認が必要になります。
- 倉庫の構造・設備が施設基準を満たしているか
- 図面や建築関係書類が揃っているか
- 検査済証など、建物の適法性を確認できる資料があるか
- 倉庫明細書や各種添付書類に記載できる情報が揃っているか
- 不足している資料について、建築士等に作成を依頼できるか
- 保管予定物品に応じた設備・性能を確認できるか
当法人がこれまで携わったケースでも、資料確認や関係者との調整に時間を要し、申請準備から登録まで6か月から1年程度かかることもありました。
倉庫業登録は、事業開始直前に準備を始めると、予定していた営業開始時期に間に合わない可能性があります。
そのため、他人の荷物を預かる事業を検討している場合は、できるだけ早い段階で登録の要否や必要資料を確認しておくことが重要です。
建築士の協力が不可欠になるケースがあります
倉庫業登録では、建物が施設基準を満たしていることを資料で確認する必要があります。
そのため、建築図面や構造関係資料の確認だけでなく、場合によっては建築士の協力が不可欠になります。
実務上は、次のようなケースで手続きが難航することがあります。
- 建築時の設計者や施工会社が申請に協力的でない
- 建築から相当期間が経過しており、当時の担当者が不在である
- 建築関係書類が十分に保管されていない
- 図面と現況が一致しているか確認が必要になる
- 施設基準を満たすことを示す資料を追加で作成する必要がある
特に、建物の遮熱性能を示す平均熱貫流率の計算書などは、そもそも作成されていないこともあります。
そのような場合には、建築士に確認や資料作成を依頼する必要があり、申請準備に時間がかかる原因となります。
倉庫業登録では、行政書士だけで完結する部分と、建築士など他の専門家の協力が必要になる部分があります。
そのため、早い段階で必要書類の有無を確認し、不足資料がある場合には、誰に、何を依頼する必要があるのかを整理しておくことが大切です。
With.行政書士法人でサポートできること
With.行政書士法人では、倉庫業登録が必要かどうかの事前相談から、登録申請が必要となる場合の手続きまでサポートしています。
倉庫業登録は、申請書を作成して提出すれば完了する手続きではありません。
実際には、倉庫の構造・設備が施設基準を満たしているか、必要な建築関係資料が揃っているか、保管予定物品に応じた確認資料が用意できるかなど、事前確認に多くの時間を要します。
当法人では、次のようなご相談に対応しています。
- 現在の保管形態が倉庫業に該当するか確認したい
- 他社の商品を預かる予定がある
- 空き倉庫を活用して保管サービスを始めたい
- EC商品の保管・発送業務を受託したい
- タイヤ保管サービスなど、本業に付随する預かりが登録対象になるか確認したい
- 倉庫業登録に必要な書類や施設基準を確認したい
- 図面、検査済証、建築関係資料など、必要資料の有無を確認したい
- 建築士に依頼すべき資料があるか整理したい
- 運輸局への事前相談を進めたい
倉庫業登録の準備では、建築士など他の専門家との連携が必要になることもあります。
また、建築から時間が経過している建物では、必要資料が揃わない、当時の担当者が不在で確認に時間がかかるといったケースもあります。
事業開始直前になってから登録が必要だと分かると、営業開始のスケジュールに大きな影響が出る可能性があります。
他人の荷物を預かる予定がある場合や、現在の保管サービスが倉庫業登録の対象になるか不安な場合は、事業開始前・契約開始前の早い段階でご相談ください。
まとめ
倉庫業登録が必要かどうかは、単に「倉庫を持っているか」「荷物を置いているか」だけで判断するものではありません。
自社の商品や資材を保管しているだけであれば、原則として倉庫業登録は不要と考えられます。
一方で、他人の物品を預かり、対価を得て継続的に保管する場合には、倉庫業登録が必要になる可能性があります。
また、自動車整備工場やタイヤ販売店が、タイヤ交換サービスに付随して顧客のシーズン外タイヤを預かるようなケースでは、倉庫業登録までは不要と考えられる余地があります。
ただし、保管サービス自体が独立した事業になっている場合や、大規模・継続的に行っている場合には、実態に応じた確認が必要です。
倉庫業登録の要否は、契約内容、請求内容、保管期間、保管物品、施設の使い方などを総合的に見て判断する必要があります。
特に、実際に倉庫業登録を進める場合には、施設基準を満たしていることの確認、建築関係資料の確認、建築士との連携などが必要となり、準備に時間がかかることがあります。
判断に迷う場合は、事業を始める前に専門家へ相談し、必要な手続きやリスクを確認しておくことをおすすめします。
参考情報
- 国土交通省「倉庫業法」
- 倉庫業法 第3条
- 東北運輸局「物流・倉庫」


