産業廃棄物収集運搬業許可を取りたい! 産業廃棄物処理業の基本と産廃収集運搬業の許可取得方法

SDGsに対する注目が集まっていることもあり、ゴミの運搬・処分に関するニーズも高い状況にあります。
「ゴミを処分すること」にもお金がかかり、定められた手続きを必要とするのが現状です。今回はそのような「ゴミを処分すること」に関わる許可「産業廃棄物収集運搬業」を取り上げ、
・混同しやすい言葉との違い
・産業廃棄物収集運搬業の許可を取得するために必要なものおよび期間
・産業廃棄物収集運搬業の許可を取得するためにかかる費用
・産業廃棄物収集運搬業に関するよくある質問とその答え
について解説していきます。

収集運搬業と処分業の違いとの違いは? 一般廃棄物に関わる業務との違いについても知る

出た場合は産業廃棄物」のように、業種によってその分類が変わるゴミも存在します。そして、この産業廃棄物を扱う業務として、「産業廃棄物収取運搬業」が存在します。

しかし、「産業廃棄物収集運搬業」という言葉について調べるとき、これと似た言葉を必ず目にするはずです。
それが、「産業廃棄物処理業」「一般廃棄物処理業」「一般廃棄物収集運搬業」です。これらはそれぞれ違う意味を持つ言葉であり、また違う許可でもあります。
一つずつその単語の意味を取り上げ、産業廃棄物収集運搬業との違いについて見ていきましょう。

産業廃棄物収集運搬業と産業廃棄物処分業の違い

まず前提として「産業廃棄物処理業」は、「産業廃棄物収集運搬業」と「産業廃棄物処分業」の2つを内包した言葉です

産業廃棄物収集運搬業と産業廃棄物処分業は両方とも産業廃棄物を処理するための資格ですが、その性質は異なります。
産業廃棄物収集運搬業の場合は、産業廃棄物の発生事業者から依頼を受けて、その産業廃棄物を車で回収する業務をいいます。産業廃棄物を一時的に保管したり、産業廃棄物を適切な場所に運んだりするのが、産業廃棄物収集運搬業の役割なのです。

対して、産業廃棄物処分業の場合は、産業廃棄物を作り出した企業から依頼を受けて、産業廃棄の処理を行います。たとえば産業廃棄物を適切なやり方で捨てたり、リサイクルをしたりすることのが、産業廃棄物処分業の業務だといえます。

この2つの仕事は、それぞれ許可を得なければ行うことができません。「産業廃棄物収集運搬業の許可を持っているから、産業廃棄物処分業の仕事もできる」「産業廃棄物処分業の許可を持っているから、産業廃棄物収集運搬業の仕事もできる」ということはなく、互換性のない資格です。そのため両方の仕事を行いたいのであれば、両方の許可を得なければなりません。

一般廃棄物を扱う業者との違い

もう一つ、「一般廃棄物処理業」についても見ていきましょう。

一般廃棄物処理業も、産業廃棄物処理業と同じように、「一般廃棄物収集運搬業」と「一般廃棄物処分業」の2つに分けられます。前者は一般廃棄物を運んだり、積み替えを行ったり、一時的に引き受けたりする業務をいいます。
対して後者は、一般廃棄物のリサイクルや処分を行う仕事です。

産業廃棄物処理業(産業廃棄物収集運搬業と産業廃棄物処分業)も、一般廃棄物処理業(一般廃棄物収集運搬業と一般廃棄物処分業)も、「ゴミを処理する業務であること」は共通しています。
しかし一般廃棄物処理業の場合、対応できるゴミは、一般家庭などから出るゴミだけに限られます。産業廃棄物には手を付けることはできません。
また、産業廃棄物処理業の許可を得ている業者も、対応できるのはあくまで産業廃棄物だけであって、一般家庭のゴミなどは触れません。これらの資格には、互換性はありません。

現在ニーズも高まっている遺品回収業者などのなかには、「産業廃棄物処理業の許可を得ていること」を大々的に押し出している業者もあります。しかし産業廃棄物処理業の許可だけで一般廃棄物処理を行うことは、本来違法となります。違法行為をした場合には罰則も課せられるので、これらの業務をしたいと考える場合は、必要な許可を適切に受けることが何よりも大切です。

【産業廃棄物処理業・一般廃棄物処理業の違いの早見表】

 分類対象業務内容
産業廃棄物収集運搬業産業廃棄物処理業産業廃棄物運ぶ、一時的に保管する
産業廃棄物処分業産業廃棄物処理業産業廃棄物リサイクルしたり処分したりする
一般廃棄物収集運搬業一般廃棄物処理業一般廃棄物運ぶ、一時的に保管する
一般廃棄物処分業一般廃棄物処理業一般廃棄物リサイクルしたり処分したりする

産業廃棄物収集運搬業の許可を取得するために必要なこととかかる期間

産業廃棄物収集運搬業は、自治体からの許可を得なければ営むことができません。そして産業廃棄物収集運搬業の許可を得るためには、以下の工程が必要です。

必要な工程

一つずつみていきましょう。

・講習会の受講と修了
産業廃棄物を適切に扱う知識と技術を持っていること、またそれを証明できることが、産業廃棄物収集運搬業の許可取得には必要となります。そのため、公益社団法人日本産業廃棄物処理振興センターの行っている講習会の受講およびその修了が必要となります。
ちなみにこの講習会は、2日間にわたって行われます。
なおこれは、「一度受けてしまえば終わり」というものではありません。新規で取得した場合は5年間、更新の場合は2年間で有効期限が切れてしまいますから、事業を継続する場合は有効期限が切れる前に更新の講習会への参加が必要です。

・産業廃棄物収集運搬業に必要な設備があること
産業廃棄物を運搬したり、一時的に保管したりすることが業務となる産業廃棄物収集運搬業を営む場合は、当然、その業務に必要な設備・機材を用意していなければなりません。たとえば、臭いが漏れないように作られた専用の車両や、その車両を止めておくための駐車場を有している必要があります。

ただし、これらは「個人・会社として所有している」状況でなくても問題ありません。借りているものであっても問題はないので、「高額な車両などを保有していなければ、産業廃棄物収集運搬業になることはできない」ということではありません。なおこの場合は、車検証の使用者欄が産業廃棄物収集運搬業の許可申請者の名前になっていないと認められません。つまり、
所有者:リース会社名
使用者;産業廃棄物収集運搬業の許可申請者名
となります。
なお不動産の場合は、使用承諾書が必要です。

・安定した経営ができていること
産業廃棄物収集運搬業を営むためには、「安定した経営基盤」が必要です。たとえば、債務超過の状態にある法人の場合は、知識と技術があっても産業廃棄物収集運搬業の許可を取得することはできません。
なおこの「安定した経営基盤」の証明は、口頭で「債務はありません」などと報告するだけではいけません。法人の場合は直近3年の損益計算書などの書類の提出が求められますし、個人の場合でも直近3年の納税証明書(※所得税)などの提出が求められます。

また、上記とあわせて考えておきたいのが、「事業計画」です。
事業を営むためには適切な事業計画を練る必要がありますが、産業廃棄物収集運搬業の場合ももちろん例外ではありません。
「自社の取り扱う廃棄物の種類と扱う量」「運んで行く先」「集め方」「環境保全のための取り組み」などをまとめて、事業計画の書類を作りましょう。

許可申請から許可が下りるまでに必要な時間はおおよそ1か月半

産業廃棄物収集運搬業の許可申請の書類を提出してから、許可が下りるまでの期間は、おおよそ1カ月半程度です。ただし地方自治体や申請するタイミングによって、多少処理期間は前後します。
また、書類などに不備があった場合は、申請が通るまでの必要期間が長くなります。

「〇月×日までに許可を受けて、開業したい」などの希望がある場合は、早め早めに動くとよいでしょう。

必要な書類は非常に多い

上で述べたように、産業廃棄物収集運搬業の許可を得るためには、
・講習を修了したことを示す証明書
・車両や駐車場などを持っていることを示す書類や、その一覧表
・事業計画書
・産業廃棄物収集運搬業の許可申請書
・役員の住民票
・登記されていないことの証明書
などが必要です。

ただこれ以外にも必要なものは数多くあります。

たとえば、使う車両の自動車検査証(車検証)はもちろん必要になりますし、申請者の履歴事項全部証明書も必要となります。なおこの「履歴事項全部証明書」とは、その法人の登記情報を表したものであり、法務局で取得することができるものです。また、法人の場合は、駐車場や事務所の写真や案内図、見取り図なども必要になります。
ちなみに、産業廃棄物収集運搬業は個人でも営めますが、「個人であれば法人よりも書類手続きが簡単である」とまではいえません。個人の場合でも、書類はしっかりそろえる必要があります。

※必要な手続き、所要期間、書類は自治体によって多少違いがあります。
※暴力団との関わりがあるなど、欠格事由に該当する場合は、申請が認められません。

産業廃棄物収集運搬業の許可を取得するためにはいくら必要になるの?

産業廃棄物収集運搬業の許可を取得するためには、お金も必要です。
必要な金額は、状況によって異なります。

新規で産業廃棄物収集運搬業の許可を得ようとする場合は、申請手数料として81,000円が必要です。なお更新手続きには73.000円が、変更手続き(扱う廃棄物の種類が増えたなど)には71.000円が必要です。

なお、産業廃棄物収集運搬業の許可申請は、独力でも行うこと自体は可能です。
しかし前述したように、産業廃棄物収集運搬業の許可申請には数多くの書類が必要になりますし、不備があったらまた提出のし直しなどが必要になるものでもあります。
そのため、特段の事情がない限りは、行政書士事務所などに頼んだ方が効率が良いでしょう。

私たちWith.行政書士法人では、産業廃棄物収集運搬業の申請の手続きのご相談を、11万円よりお引き受けしています。なお申請内容によって価格は異なりますので、詳細はご相談ください。

引用:With.行政書士法人「料金」
https://gyoseisyosi.jp/ryoukinn/

産業廃棄物処理業、よくあるQ&A

最後に、産業廃棄物収集運搬業についてのよくある質問に答えていきます。

Q許可を得ずに産業廃棄物収集運搬業を営んだ場合はどうなるか?
A5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金またはその両方が課せられ

産業廃棄物収集運搬業の許可なくこれを営んだ場合は、「無許可営業」とされ、5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金が科せられます。また、ケースによっては、懲役刑と罰金刑の両方が課せられることがあります。
また、不正な手段で産業廃棄物収集運搬業の許可を得た場合にも、同じ罰則が科せられます。さらに、事業範囲が変更になったにも関わらずそれを申請していなかったり、事業停止の命令などを聞かなかったりした場合も、同じように罰が与えられます。

出典:群馬県「廃棄物処理法における罰則一覧表」
https://www.pref.gunma.jp/site/sanpai/131504.html

Q個人での許可を法人に持ち込むことはできる?
Aできない

「個人で産業廃棄物収集運搬業の許可を得たが、その後で法人化した」という場合は、また改めて産業廃棄物収集運搬業の許可の申請をする必要があります。
なおこれは、「個人で産業廃棄物収集運搬業の許可を取得して、法人化した後も一人で仕事を行う(いわゆる『一人親方』の状態)」であっても同じです。個人で得た許可は法人に引き継ぎができない点には注意しましょう。また、場合によっては講習会に再度参加し直す必要があります。

Q自力で申請はできる?
Aできなくはないが難しい

産業廃棄物収集運搬業の許可申請は、個人で行うこともできるものです。ただ、必要な書類が非常に多く、また煩雑です。必要書類がそろっていないあるいは不備があると、改めて提出をし直さなければならないという面倒さもあります。
このため、特段の事情がない限りは、行政書士法人などに頼ることをおすすめします。10万円~の費用はかかりますが、かかる時間や面倒さを考えれば、決して高い費用とはいえません。

「産業廃棄物収集運搬業をやりたいが、どうすればいいかわからない」「書類をできる限り自分でそろえてみたが、これで良いのか自信がない」「開業したい日が決まっていて、それまでの間に書類をそろえられるかどうか自信がない」という方は、ぜひ私たちにご相談ください。With.行政書士法人では、専門家の知識と技術で、クライアント様の産業廃棄物収集運搬業開業のお手伝いを行います。


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※今回は産業廃棄物収集運搬業のことを取り上げましたが、産業廃棄物処分業や一般廃棄物処理業などのご相談もお引き受けしています。