車庫証明とは、自動車を保管するための場所(車庫)を証明するための書類です。車を所有するにあたり、法律でその保管場所の確保が義務づけられています。その保管場所が所定の基準を満たしていることを証明するために必要なのがこの車庫証明です。本記事では申請手続きをスムーズに進めていただくために必要な事項について解説していきます。
車庫証明とは車の保管場所を証明する書類
車庫証明とは、自動車を保管する場所が適切であることを証明する公的な書類のことを指します。自動車(普通車)を購入し、登録を行う際には、車庫証明の取得が法的にほぼ必須となっています。国や地方自治体は、自動車の所有者が車を適切に保管する場所を持っていることを確認するために、車庫証明を必要としています。車庫証明を取得するには、一定の手続きと、必要な書類の提出が求められます。以下に車庫証明の取得が必要となるときや、その取得方法、車庫証明申請前に知っておくべき知識、行政書士への依頼について、そしてよくある質問について詳しく書いていきます。
車庫証明の取得が必要となるとき
車庫証明が必要になるときは以下の通りです。
- 車を新たに購入したとき
- 車の使用者が変わったとき
- 車の保管場所を変更したい場合
申請の多くは「1.車を新たに購入したとき」です。車を購入し、車検証の名義を変える手続きをする際に車庫証明の添付が必要となります。
「3.車の保管場所を変更したい場合」には保管場所(車庫)だけでなく、お引越しをされて使用の本拠ごと変更となる場合を含みますので、このケースもよくあります。
車庫証明の申請には必要書類を揃え、申請手続きを行う必要があります。具体的な申請方法や必要書類、書き方については、後述の見出しで詳しく説明します。
車庫証明の取得方法
車庫証明の取得は一見難しそうに思われがちですが、必要な手続きを理解していれば誰でも行うことができます。まずは、車庫証明を取得するためには地元の警察署に申請を行う必要があります。その際、申請者本人が出頭することが求められますので、時間を作って行くことが重要です。また、申請には必要な書類を揃える必要があります。その詳細は次の章で詳しく説明しますが、基本的には車庫の所有者の同意書や土地の登記簿謄本などが必要となります。さらに、車庫証明の申請には車庫の場所確認が行われるので、その日程調整も忘れずに行いましょう。車庫証明の取得は手間がかかる作業ですが、一つ一つ丁寧に進めていけば確実に手に入れることができます。次の章では、車庫証明を取得するために必要な書類とその書き方について詳しく解説します。
必要な書類と書き方
車庫証明の取得には、いくつかの必要な書類と必要情報の記入が必要です。申請者や車庫の場所の情報や車庫の敷地を示す配置図が必要となります。また、車両の情報を記載するために車検証のコピーも必要となるため、事前に用意しておきましょう。
書類の書き方については、以下の見出し以降で解説していきます。
これらの書類と書き方を理解し、適切に準備することができればで車庫証明の取得をスムーズに進めることができます。書類の書き方のポイントを押さえ、申請が滞りなく進められることを目指しましょう。
【普通車】自動車保管場所証明申請書
「自動車保管場所証明申請書」これがいわゆる車庫証明(普通車)の申請書の様式となります。自治体によって枚数や記入する項目に違いがありますが多くの場合4枚複写の用紙になっており、記入する基本事項は共通しています。
記入が必要な事項は以下の通りです。
- 車名
- 型式
- 車台番号
- 自動車の大きさ(長さ、幅、高さ)
- 自動車の使用の本拠の位置
- 自動車の保管場所の位置
- 申請者(住所、氏名、電話番号)
- 申請日
- その他記入事項(保管場所土地の所有者について、申請の種別、現在の保管台数、申請関与者の連絡先など)
自動車保管場所証明申請書の記入にあたっては、自動車の車名、型式、車台番号、自動車の大きさの情報が必要となります。車検証(車検証記録事項)など自動車の情報が記載されたものを用意しましょう。また、自動車の使用の本拠の位置(自動車を使用する拠点となる場所)の記入が必要です。※多くの場合、住民票に記載されている住所と同じになるでしょう。自動車の保管場所の位置については、住所と同じ敷地内であれば使用の本拠の位置と同じとなり、別の場所に借りていれば、その借りている場所の地番を記載します。申請者の情報は印鑑証明書や住民票と同じように記載すればOKです。番地などは-(ハイフン)を使った簡易な記載でも問題ない場合が多いです。
この申請書に以前は認印を押印しなくてはならなかったのですが、令和2年10月から押印不要に変更となりました。書き間違えた場合でも現在では訂正印は不要で二重線で修正することが可能です。(修正液・テープでの修正は不可のため、ご注意ください。)とはいえ自動車保管場所証明申請書の記入には十分に注意し、間違いのないようにすることが大切です。また、申請書の記入に不安がある場合には、専門の行政書士に依頼することも一つの方法となります。
【軽自動車】自動車保管場所届出書
「自動車保管場所届出書」これは軽自動車の車庫証明の届出様式です。普通車は申請書ですが、軽自動車は届出書となっています。これは車庫証明の取扱いの違いを表しており、普通車は登録(名義変更など)の際に事前に車庫証明を取得していること(車庫証明の提出)を求められますが、軽自動車は事前の車庫証明の取得を必須とせず、「軽自動車を購入したり、変更があった際は(事後で構わないので)届出書をだしてくださいね」という運用になっているのです。
記入する内容は普通車の自動車保管場所証明申請書と同様です。違いとしては複写式の枚数が3枚ということと、事前の取得が必須でないということです。
また注意すべきポイントとして、場所によって軽自動車の車庫証明手続きを不要としている場所もあるため、事前に確認することが必要です。
保管場所使用権原疎明書面(自認書)〈ご自身の土地の場合〉
車庫証明を取得するためには、保管場所(車庫)の使用権原があることを証明する書類の提出が必須です。自分の土地を保管場所とする場合には「保管場所使用権原疎明書面(いわゆる自認書)」が必要となります。これは、自分が所有する土地を車の保管場所として使うことを証明する書類で、ご自身の住所、氏名、連絡先を記入することとなっています。特に土地の所有権を証明する土地の登記簿謄本などは求められませんが、疑義があると申請窓口で審査が滞る場合がありますので、しっかりと確認してから記入しましょう。
保管場所使用承諾証明書・〈借りている駐車場の場合〉
保管場所(車庫)の使用権原があることを証明する書類の内、借りているの土地を保管場所とする場合には「保管場所使用承諾証明書」が必要となります。これは駐車場の所有者から車の保管を承諾されていることを示すものです。具体的には、駐車場の所有者が記名・押印したもので、借りている駐車場の地番、使用者などを明記します。また、駐車場がマンションの住人専用駐車場など、第三者(管理会社など)が管理している場合は、管理者から承諾書を交付されていても有効です。
この証明書は一部注意が必要です。まれに駐車場の所有者や管理者の欄のみが記入されて使用者に交付されることがありますが、その場合保管場所の位置(駐車場の地番)や使用者の欄(使用者住所、氏名、連絡先)を誤りがないよう記入がする必要があります。
なおこの書類も令和2年10月以降押印が不要となりました。(押印があっても問題ありません。)ただしいつもは押印があるのに、提出した保管場所使用承諾証明書に押印がない場合など、所有者・管理者の承諾に疑義がある場合は、警察署から所有者・管理者に確認の連絡がいく場合があります。確認した上で所有者・管理者が交付したものと分かれば車庫証明申請は受理されます。※保管場所使用承諾証明書は所有者・管理者以外の第三者が作成することは認められません。(もし使用者自身などが作成した場合は文書偽造になりますのでご注意ください)
所在図・配置図
車庫証明を取得するために必要な書類に「所在図」および「配置図」があります。所在図は車庫がある土地の位置関係を示し、配置図はその土地上の車庫の位置や大きさを具体的に示すものです。これらの書類は申請者自身が作成する必要がありますが、書き方は一定のルールがあります。まず、所在図には該当する土地を特定できるように周辺の道路や建物などを明記します。現在ではインターネット上やマップアプリ等で地図を印刷すれば簡易に所在図は用意できるでしょう。
配置図は作成に少し手間がかかるかもしれません。配置図には、車庫がどのような配置になっているかわかるように土地内での位置を詳細に描きます。また車庫の大きさ、道路と敷地の出入口の長さ、前面道路の幅を記載する必要があります。また車庫の大きさには当然道路を含めることができず、車両が敷地内に収まっている必要があります。少しでも道路にはみ出していると不許可となりますので、配置図を作成する際には保管場所を正確に計測し、配置図落とし込むことが必要となります。これらの書類をひとつひとつ丁寧に作成し、全ての情報が正確であることを確認することが車庫証明の申請には重要です。
そのほかに用意するもの
例外的に必要となる書類について解説します。まず、最も頻出するのが「使用の本拠の位置と保管場所の位置の距離を示す書類」です。これは「使用の本拠の位置」と「駐車場の位置」が別の場所(外部で借りている駐車場など)で距離が離れている場合に添付が必要となります。これは「使用の本拠の位置」と「保管場所の位置」が2㎞以内というルールがあるためです。2㎞未満で余裕がある場合は問題ありませんが、2㎞ギリギリの距離の場合は厳密に審査されますのであらかじめ確認することをおすすめします。なおこの2㎞は直線距離での計算となります。道路が迂回していて2㎞を越えていても、直線距離で2㎞以下であれば問題ありません。この書類も所在図と同様にインターネット上やマップアプリ等で手に入ります。
次に、「所在証明」があります。これは使用の本拠の位置(自動車を使用する拠点)が住民票を置いている場所と違う場所の場合に添付が必要となる書類です。例えば東京都に住民票を置いている方が単身赴任で地方で暮らしていて、その拠点で自動車を使用する場合などです。その場合、その場所に拠点を持っていることを証明する書類として「所在証明」が必要となります。多くの場合、公共料金(電気、ガス、水道、固定電話など)の領収書、消印付きの郵便物などがこれにあたります。※これは申請地によってルールが違うため、審査を行う警察署によく確認してください。
他にも申請地によって別の書類や要件を求められるケースもありますので、個別に確認することが重要です。
車庫証明申請前に知っておくべき知識
車庫証明の申請は、必要な書類の揃え方や申請手続きの流れなど、慣れていないと難しいと感じることがあるかもしれません。しかし、知っておくべき基本的な知識を押さえることで、スムーズに手続きを進めることができます。車庫証明申請を行う前に読んでいただければ幸いです。
申請先は車庫を管轄する警察署で行う手続き
車庫証明の申請は、自分が車を保管する場所(車庫)を所轄する警察署で行う手続きです。ここでのポイントは、申請者の住所や使用の本拠の位置ではなく、保管場所(車庫)が所在する地域の警察署に申請するということです。警察署によっては窓口の開いている時間や審査にかかる期間が異なる場合があるため、事前に確認しておくことが重要です。また、申請に必要な書類も地域によって若干異なる可能性があるので、その点も注意が必要です。交通課(または類似した名称の課)に申請書を提出します。
取得の要件
車庫証明を取得するためには、特定の条件を満たす必要があります。
- 車庫となる場所が申請者の所有または使用権を持つ土地であること
- 保管場所(車庫)が車の大きさに適した広さであること
- 使用の本拠の位置から保管場所(車庫)までの距離が2㎞以内であること 【重要】
- 申請書に車両の情報、申請者の情報など必要事項が記入されていること
- 配置図に車庫の寸法、出入口の長さ、直前道路の幅の長さが記入されていること
- 申請者住所と使用の本拠の位置が違う場合、所在証明を用意できること 【警察署によって違いあり】
これらの要件は一例であり、地域や車種によって詳細な要件は異なる場合もありますので、詳しい情報は各地の警察署に直接問い合わせることをおすすめします。
立体駐車場の場合に注意すること
車庫証明を申請する際には、車を保管する場所によって注意点が異なります。特に、立体駐車場を車庫とする場合、必ず車両の高さと駐車場が許容する高さの寸法を確認してください。平面の駐車場では車両の高さは審査されませんが、立体駐車場になると審査の対象となります。多くの場合、立体駐車場の入り口に許容寸法の記載がありますので、そこで確認が取れるでしょう。立体駐車場を車庫とする際には、くれぐれも注意し申請の準備を進めましょう。
住民票と違う場所を使用の本拠とする場合
本拠地と異なる場所に住民票がある場合、その理由の説明を求められる場合もあります。例えば、仕事や学業で一時的に他の場所に住んでいるといった理由がある場合、にはその理由を説明すればよいでしょう。
上でも書いたように警察署によっては「所在証明」の書類を求めれらる場合もあります。事前に確認と準備を怠らないようにしましょう。
車庫証明の有効期限
車庫証明の申請を検討している方々にとって、車庫証明の有効期限は重要な情報となります。一般的に、車庫証明の有効期限は発行日から1ヶ月とされています。この期間を過ぎると再度車庫証明の申請を行う必要があります。登録を行う運輸支局では40日まで有効としていることもあるため、規定の1ヵ月を超えてしまった場合は確認すると良いでしょう。
引っ越しなどの際は住所変更が必要
引っ越しや住所変更を行った際には、その新しい保管場所についても車庫証明を取得する必要があります。当然ですが旧住所で取得した車庫証明は、新住所には適用されないためです。そのため、引っ越しや住所変更を行った際には、車庫証明の申請が必要となります。この手続きを怠ると、法令違反になりますので注意が必要です。また車庫証明だけでなく車検証の住所変更登録手続きも、忘れずに行われていなければなりません。車庫証明の申請を行う前に、まずは住民票の移動など、必要な手続きをすべて完了させておくことが大切です。これらの手続きには時間がかかる場合があるため、早めに行動に移すことが肝心です。
車庫証明の申請は行政書士に依頼することもできる
車庫証明の申請は、慣れていないと手続きが複雑で時間がかかるため、自身で行うのが難しいと感じる方も多いかと思います。車庫証明の申請は、行政書士に依頼することが可能です。行政書士は、行政の提出する書類を作成する専門知識を持つプロフェッショナルで、各種の手続きを代行することができます。車庫証明の申請もその一つで、書類の作成から申請まで、全てを行政書士にお任せすることができます。依頼することにより、手続きの時間短縮やミスの防止など、多くのメリットがあります。手間と時間を考えると、十分に価値があると言えるでしょう。料金やサービスは依頼する行政書士事務所により異なる場合があります。車庫証明の申請にお困りの方は、是非行政書士への依頼を検討してみてください。