MENU

運送業許可取得するには何を提出する?必要書類を解説します

トラックを使った運送業を始めるには、国土交通大臣または運輸支局長の許可が必要になります。
そして、運送業を始めようとする事業者が運送業の許可を得るには、管轄の運輸支局に申請する必要があり、このとき多くの書類を添付しなければなりません。

この「必要書類」は数が多いだけでなく、作成が難しいものもあります。
そこでこの記事では、運送業許可申請で必要になる書類について、なるべく分かりやすく紹介します。

運送業許可申請の際、必要書類とは?

まず、運送業許可の手続きにおいてどんなものが必要書類に該当するか、簡単に解説します。
・申請書、事業計画など、申請者が(または代理の行政書士が)作成する書類
・申請書や事業計画に記載された内容が正しいことを確認・証明するための書類
(例 登記事項証明書、住民票など役所が発行するもの、図面や地図など)

運送業を始めるのに必要な書類

企業などの事業者が運送業を始めるには、
1)運輸支局に申請して、
2)国土交通省または地方運輸局が申請内容を審査して、
3)国道交通大臣または地方運輸局長が許可して、
4)運送業を開始する、
という4つの段取りを踏む必要があります。

必要書類は、主に1)運輸局に申請するときに必要になる書類です。
ただ、運送業の許可では初回申請の際に加えて、審査途中、許可後と書類提出のタイミングが複数ありますので注意が必要です。

必要書類の重要性

必要書類は、国土交通省または地方運輸局が審査をします。
申請書、事業計画と添付書類を照らし合わせ、間違いがないか、法令に抵触していないか、要件を満たしているかなど一点ずつ確認し、すべてを満たしていれば許可が下りることになります。
運送業の許可を得るには、要件を満たすことに加えて、必要書類を確実に作成する、もれなく収集する必要があるわけです。

必要書類を1種類ずつ詳しく解説

運送業許可申請のときに必要になる書類は以下のとおりです。(「~計画」や「~体制」となっているものも、それぞれ書類の名称となります。)

必要書類の一覧

  • 一般貨物自動車運送事業の経営許可申請書
  • 事業計画
  • 事業用自動車の運行管理等の体制
  • 事業計画を遂行するに足りる有資格者の運転者を確保する計画
  • 事業開始に要する資金及び調達方法
  • 残高証明書等
  • 事業の用に供する施設の概要及び付近の状況を記載した書類
  • その他、法人に必要な書類
  • その他、個人に必要な書類
  • 法第5条(欠格事項)各号のいずれにも該当しない旨を証する書類
  • 法令遵守の宣誓

それでは1つずつ書類の内容を紹介していきます。

一般貨物自動車運送事業の経営許可申請書

「一般貨物自動車運送事業の経営許可申請書」は、いわば必要書類全体の「表紙」のようなものです。
ここに記載する項目は、申請者の名称、代表者の氏名、住所、電話番号など、会社の基本事項になります。

事業計画

「事業計画」には運送業に関する基本情報を記入します。

記載項目は、以下の通りです。

  • 事業種別
  • 主たる事務所と営業所の住所や電話番号
  • 事業者の資本金・決算期
  • 休憩・睡眠施設の住所や収容能力
  • 自動車車庫の住所や収容能力・車庫に接する道路の幅員
  • 自動車の種別(普通・小型など)と台数
  • 利用運送をする場合は、営業所の場所や利用する事業者の概要

事業用自動車の運行管理等の体制

「事業用自動車の運行管理等の体制」は詳細な記述が求められます。そのため事業者は、事前に運行管理体制を構築しておく必要があります。

この書類に記載する項目は、大きく以下の2つになります。

①運行管理の体制

毎日の運行管理をどのような体制で行っていくかを記載する様式です。
運行管理者、整備管理者(選任していれば運行管理補助者、整備管理補助者)を記載します。


選任計画として、上記運行管理者及び整備管理者を確保済みか確保予定か、常時選任運転者(ドライバー)の人数、その他従業員の人数を記載します。まだ確保していないが、営業開始までに確保予定の場合は「〇年〇月〇日までに確保予定」で問題ありません。

さらに、アルコール検知器の配備計画、日常点検の場所(車庫・営業所など)、日常点検の実施者など、点呼方法についても記載します。
営業所と車庫が事情により離れている場合は距離、車庫と営業所の連絡方法なども書きます。

点呼方法について
運送業の計画を立てる段階で、点呼方法について詳細に決めなければなりません。
具体的には、営業所と車庫が併設されていない場合は、運行管理者のいる営業所と車庫の間の移動手段と所要時間、運行管理者は毎日何時から何時まで車庫にいるのか、などです。
トラックが出発する時間帯と、帰ってくる時間帯を記載します。

なぜこんなに点呼方法について詳細に記載する必要があるかというと、毎日の運行管理・アルコールチェックが、ドライバーの健康管理、安全運転、そして法令遵守に直結するからです。
大切なことですので、形式的に記入するのではなく、毎日実施できる方法を具体的に検討する必要があります。

②事故防止、及び過積載の防止等に対する指導教育、及び事故処理等の体制

例えば事故防止に関する指導教育方法・計画では、定期的な研修や講習会を実施するかどうかを書きます。また事故処理の体制では、事故に遭遇した運転者が電話をする運行管理者の電話番号や社長の電話番号を記載します。
苦情処理体制の項目には、苦情処理責任者と苦情処理担当者の氏名と役職を記載します。

事業計画を遂行するに足りる有資格者の運転者を確保する計画

「事業計画を遂行するに足りる有資格者の運転者を確保する計画」には、前述した運行管理体制の計画に記載した運転者(ドライバー)について、確保状況などを記載します。
運転者の人数は、車両の最低台数が5台となりますので、原則5名以上必要です。

  • 運転者の氏名(確保予定の場合は、確保予定年月日)
  • 一ヶ月あたりの拘束時間
  • 一日当たりの拘束時間
  • 一ヶ月あたりの常務日数
  • 運転時間(2日連続平均1日当たり、2週平均1週当たり、連続運転)
  • 休息時間

また、勤務割計画や乗務割計画について、労使協定を締結する予定があるかどうかにも回答する必要があります。

事業開始に要する資金及び調達方法

「事業開始に要する資金及び調達方法」には、営業開始後6ヶ月の間にどの程度資金が必要かを説明する書類です。①営業開始前にかかる費用 と②6ヶ月のランニングコスト 両方を記載します。

①営業開始前にかかる費用
車両の購入費、営業所に備え付ける備品等の購入費、登録免許税など
②ランニングコスト
役員報酬・ドライバーの給与と社会保険料、燃料費、トラックなど車両の修繕費、トラックなど車両のリース代、保険料、家賃、その他の経費など

詳細に書くことが求められるので、ドライバーの給与をどの程度に設定するか、リース料や保険料がいくらになりそうか、具体的に検討する必要があります。
また、この「事業開始に要する資金及び調達方法」で算出した金額を元に、残高証明書を提出して資金要件を満たすことを証明することになります。

各項目の詳細を説明

人件費の項目には「役員報酬の月額×6カ月分」「従業員の給与や手当の月額×人数×6カ月分」「賞与の額」「法定福利費(健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険の料金)×6カ月分」「厚生福利費」を記載します。

そのほかの記載項目は以下のとおりです。
「月の燃料費×6カ月分」
「油脂費(燃料費の3%)」
「月の修繕費×台数×6カ月分」
「車両費(購入費またはリース料×6カ月分)」
「施設購入費または使用料」
「什器・備品費」
「施設賦課税(自動車税、重量税、環境性能割)」
「保険料(自賠責保険料、任意保険料の1年分)」
「登録免許税(運送業許可にかかる手数料)」
「その他(旅費、会議費、水道光熱費、通信費、広告費などの2カ月分)」
「自己資金額」

上記のうち、車両についての「施設賦課税」と「保険料」にかかる部分は、別紙で内訳を記入します。
記載事項は「車両積載量」「車両総重量」「取得価格」「自動車税」「重量税」「環境性能割」「自賠責保険費」「任意保険費」です。

加えて、資金について、預貯金額、流動資産、流動資産のうちの現金額を記載します。残高証明書の金額+流動資産の合計が、必要な資金額を下回らないよう気をつけます。

残高証明書等

上記の「事業開始に要する資金及び調達方法」に記載した資金を確保できるのかどうかは「残高証明書」で確認します。
自己資金については、申請日以降許可日までの間、確保されていることが必要です。
許可の前に2回目の残高証明書提出をする必要がありますので、資金の確保に注意してください。

事業の用に供する施設の概要及び付近の状況を記載した書類

●付近の案内図、見取図、平面(求積)図、写真
案内図…営業所、休憩・睡眠施設、車庫の位置関係と距離が分かる地図
見取図…営業所、休憩・睡眠施設、車庫の詳細な図面
平面求積図…営業所の面積、休憩・睡眠施設の面積、車庫の面積 面積を計算する式も記入します
写真…営業所の外観、営業所の入り口(会社名が分かるように)、営業所の内観、休憩・睡眠施設の内観

●都市計画法等関係法令に抵触しない旨の宣誓書
農地法、都市計画法、建築基準法やその他関係法令に抵触しないことを宣誓する書類です。事前に調査して、これらの法令に抵触していないことを確認して申請者名で宣誓します。

●施設の使用権原を証する書面

施設とは事業所、営業所、車庫などのことで、これらの使用権原を証するために提出します。
具体的には以下の書類が必要になります。
・自己所有の場合:不動産登記事項証明書等
・借入の場合:建物使用承諾書や賃貸借契約書等の写し
       使用目的や契約期間(2年以上)の確認が大切です

●車庫の前面の道路に関する書類(幅員証明書)

車庫の前面道路はトラックなどの大型車両が頻繁に出入りすることになりますので、十分な幅員があるか確認するための書類です。区役所道路課などで取得します。

●計画する事業用自動車の使用権原を証する書面

トラック等の車両が自己所有か、それともリースなどで使用権原を持っているのかを明らかにする書類を提出します。
・自社保有車両の場合:売買契約書、または、売渡承諾書の写しなど
・リースの場合:自動車リース契約書の写し

その他、申請者が法人の場合に必要な書類

法人が運送業許可申請する場合、ここまで説明した書類の他に、以下の書類が必要です。
・定款または寄付行為及び登記事項証明書
・決算書(第1期決算未到来の場合は開始貸借対照表、第2期目以降は決算書)
・役員の名簿と履歴書

その他、申請者が個人の場合に必要な書類

運送業を営業できるのは法人に限られているわけではなく、個人でも運送業許可申請を行うことができます。
個人で申請するときは、以下3点の書類が必要です。
・資産目録
・戸籍抄本
・履歴書

欠格事項 各号のいずれにも該当しない旨を証する書類

運送業について規定する「貨物自動車運送事業法」第5条(欠格事項)には次のように書かれています。

■貨物自動車運送事業法第5条(欠格事項)(一部略)

国土交通大臣は、次に掲げる場合には、第三条の許可をしてはならない。
一 許可を受けようとする者が、一年以上の懲役又は禁錮の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から五年を経過しない者であるとき。
二 許可を受けようとする者が、一般貨物自動車運送事業又は特定貨物自動車運送事業の許可の取消しを受け、その取消しの日から五年を経過しない者であるとき。
 許可を受けようとする者と密接な関係を有する者(許可を受けようとする者(法人に限る。以下この号において同じ。)の株式の所有その他の事由を通じて当該許可を受けようとする者の事業を実質的に支配し、若しくはその事業に重要な影響を与える関係にある者として国土交通省令で定めるもの(以下この号において「許可を受けようとする者の親会社等」という。)、許可を受けようとする者の親会社等が株式の所有その他の事由を通じてその事業を実質的に支配し、若しくはその事業に重要な影響を与える関係にある者として国土交通省令で定めるもの又は当該許可を受けようとする者が株式の所有その他の事由を通じてその事業を実質的に支配し、若しくはその事業に重要な影響を与える関係にある者として国土交通省令で定めるもののうち、当該許可を受けようとする者と国土交通省令で定める密接な関係を有する法人をいう。)が、一般貨物自動車運送事業又は特定貨物自動車運送事業の許可の取消しを受け、その取消しの日から五年を経過しない者であるとき。

欠格要件について、全ての要件はこちらからご確認ください。↓

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=401AC0000000083

欠格事項に該当しないことを宣誓するため、「宣誓書」を作成して提出します。
欠格事項に該当しないかどうかは、運輸支局が申請者を調査する段階で照会がかけられます。

法令遵守の宣誓

「法令遵守の宣誓」では次の内容を宣誓します。

●宣誓内容
【法人の場合】
申請日前6カ月間、運送業法違反による営業停止処分を受けた会社の執行役員でないこと。
申請日以降に、運送業法違反による営業停止処分を受けた会社の執行役員でないこと。

【個人の場合】
申請日前6カ月間、運送業法違反による営業停止処分を受けた者でないこと。
申請日以降に、運送業法違反による営業停止処分を受けた者でないこと。

記載の際、注意することを紹介

必要書類は正確に、不足なく書くことが求められます。
もし正確に書かれていなかったり、必要なことが書かれていなかったりすると、運輸支局から補正を求められます。
添付書類と整合性が取れるように、正確に記載することが必要です。

国土交通省は、よくある記載誤りや補正事項の例を挙げています。その一部を紹介します。

■必要書類によくある記載誤りや補正事項の例(一部)

  • 運行管理者の資格者証番号や交付年月日が記載されていない
  • 整備管理者の「選任前研修終了年月日」もしくは「合格証書及び交付年月日」が記載されていない
  • 労使協定締結予定の有無について、1日当りの拘束時間が所定時間以上の場合「有」になっていない
  • 拘束時間、運転時間及び休息時間が自動車運転者の労働時間等の改善基準告示を満たしていない
  • 給与・手当が最低賃金以上になっていない
  • 法定福利費に関する事業主負担率が正しく計上されていない
  • 任意保険の内容が、対人賠償は無制限、対物賠償は200万円以上になっていない
  • 営業所と休憩・睡眠施設の求積図について、それぞれ区分された求積として計上されていない
  • 定款と登記事項証明書の整合性がとれていない。例えば、定款と登記事項の目的が一致しない、資本金が一致しないなど

まとめ~事業円滑化に弊社をお役立てください

運送業許可申請のときに必要になる書類を紹介しました。

国土交通省または地方運輸局が、運送業を始めようとする事業者に多くの必要書類を求めるのは、「申請者が法律にのっとって運送業を営業できるのかどうか」をチェックするためと言えます。

これらの必要書類をつくるには、当然ですが運送業法に適合する事業の実態がともなっていなければならず、つまり事業者はまずは運送業を始められる態勢を整える必要があるわけです。

これから運送業を始める事業者は、運送業の態勢を整えながら必要書類をそろえていかなければなりません。

時間と手間がかかるだけでなく、要件を満たし、必要書類がすべてそろっていないと許可が下りないので正確を期さなければなりません。
書類の作成に時間をかけるよりも、事業のスタートアップを円滑に進めるほうが重要なことだと思いますし、我々はそのために事業者様のお力になりたいと考えています。
専門的な知識が必要になる運送業許可や、運送業の変更などでお困りの場合は、ぜひWith.行政書士法人にお問い合わせください。

お問い合わせフォームに遷移します