遺留分を放棄するとどうなる?相続放棄との違いも解説

遺留分とは、法定相続人が最低限取得できる遺産の割合のことですが、遺留分を放棄するとどうなるのでしょうか?
また、似た言葉に「相続放棄」という言葉があります。今回の記事では、この2つの違いについても説明します。

目次

遺留分とは?権利を持つのは誰か

遺留分とは、法定相続人に、相続財産の中から必ず受け取れる持分を定めたものです。

遺留分の権利を持つのは、

  • 配偶者
  • 直系卑属(子、子の代襲相続人を含む)
  • 直系尊属(父母、祖父母など)

以上の3つに該当する人です。
被相続人に子どもと父母がいなかった場合、配偶者と兄弟姉妹が法定相続人ですが、兄弟姉妹に遺留分はありません。

遺留分の割合

次に、遺留分の割合について具体的に説明します。

①父母(直系尊属)が相続人の場合、遺留分は相続財産の3分の1
②配偶者や子が相続人の場合、遺留分は相続財産の2分の1となります。

相続人が配偶者と子どもの計2名という場合は、2人合わせた遺留分は相続財産の2分の1となります。

例えば被相続人が生前に「長男に財産をすべて相続させる」という遺言を書いていたとして、遺留分がなければその後の生活が大変になってしまいます。実際には、配偶者には遺留分があるので、相続財産全体の2分の1は最低限相続できます。被相続人と生計を一つにしていた家族が生活していけるように守る制度が、遺留分の制度ととらえることができます。

遺留分が侵害されたときに請求できる「遺留分侵害請求権」

遺留分を受け取るためには「遺留分侵害額請求」という手続きが必要で、自分から請求をしなくても自動的に遺留分が保証されるという趣旨のものではありません。

逆にいうと、遺留分侵害額請求する権利があっても、遺言どおりの遺産分割でよいと考えるのであれば、遺留分侵害額請求をする必要はありません。

よく、夫が亡くなって妻が全てを相続し、子ども達はなにも相続しないというケースがありますが、子ども達がその内容でよければ、なにも請求する必要はありません。
請求するのは、相続人が実際に自分の遺留分が侵害されていて、自分の遺留分を守りたいと考える場合だけです。

遺留分侵害請求権は、被相続人が亡くなったことと侵害の事実を知ったときから、1年以内に行使する必要があります。


遺留分侵害額請求を行うと、相続人は遺留分を侵害した人に対して、侵害された分の金銭を請求することができます。

ですが、2019年6月30日以前に開始された相続には、旧民法の「遺留分減殺請求」という名称とそのルールが適用されます。侵害額請求と減殺請求の主な違いは、請求の方法にあります。
遺留分侵害額請求では、侵害された遺留分を金銭で取り戻すことが主な手段です。この制度は、侵害された遺留分の価値を金銭で評価し、その額を請求する方法です。これにより、複雑な現物分割を避けることができます。

侵害された遺留分を金銭で請求・返還するために、遺産の金額を時価で計算します。

遺産が現金や預金のように明確な場合は問題になりませんが、土地や建物のように価値が変動する資産である場合、路線価を使用して不動産を評価したり、固定資産税評価額を使用したりして、評価額を算出します。

遺留分の放棄とは

相続時のトラブルを回避するために、事前に遺留分を放棄したいという場合もあります。
その場合、遺留分を有する(将来の)相続人は、相続の開始前、つまり、被相続人の生存中にあらかじめ遺留分を放棄することができます。
ただし、遺留分は法定相続人に保証された権利ですので、放棄するには家庭裁判所の許可を得る必要があり、申立先は被相続人の住所地の家庭裁判所となっています。

遺留分放棄が認められる基準として、以下のような判決があります。

  • 放棄が推定相続人の自由意思に基づくものであるか
  • 放棄理由に合理性・必要性が認められるか
  • 放棄の代償の有無

放棄の代償というのは、遺留分を放棄する代わりに生前贈与などを受けているかということです。例えば、マイホームを購入するときに資金の提供を受けたなどの事情があれば、遺留分放棄をする理由として受け入れられやすいといえます。

注意点

  • 家庭裁判所の許可が必要。理由によっては認められない場合もある
  • 一度放棄すると撤回できない

遺留分の放棄と相続放棄の違い

遺留分放棄と似ている言葉に、【相続放棄】がありますが、どのような違いがあるのでしょうか。
相続放棄の概要は次の通りです。

目 的  相続放棄は、相続人が被相続人の財産(資産だけでなく、負債も)を一切受け取らないことを意味します。

手続き 被相続人の死亡後、相続開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に相続放棄の申し立てをします。相続開始前に相続放棄をすることはできません。

効 果 相続放棄をすると、最初から相続人でなかったものとみなされます。これにより、他の相続人がその分を相続することになります。

注意する点が、遺留分の放棄をしても、相続人としての地位は失われないということです。
もし、法定相続人の一人に全ての財産を確実に相続させたいような事情がある場合は、遺言書を作成したうえで、遺留分を持つ推定相続人に遺留分放棄を申し立ててもらわなければならないということになります。

遺留分の放棄をするとどうなるか?

結論

遺留分の放棄をすると、遺言書で相続財産を割り当てられなければ相続できない。

遺留分放棄を検討する場合は専門家に相談しよう

遺留分放棄を検討する理由には、被相続人や相続人の中で様々な事情があります。遺留分放棄のみではなく、遺言書とセットにして検討しなければならないことも多いので、専門家に相談することをお勧めします。

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