一般貨物自動車運送事業の許可取得、その手順について解説!

一般貨物自動車運送事業

トラックを使って有償で荷物を運ぶ、いわゆる運送業の仕事をしている方の中には、将来的に独立を計画している方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、自分で運送業を開始するぞ!と意気込んでも、誰でも簡単に独立できるわけではないのが現実です。
トラックを使う運送業は正式には「一般貨物自動車運送事業」といわれており、事業のための許可取得をしなければいけません。
「一般貨物自動車運送事業と言われても馴染みのない言葉だし、どうやって許可を取ればいいの?」と困っている人もいるでしょう。
一般貨物自動車運送事業​​に関する疑問で多いのは、以下のような項目です。

  • 一般貨物自動車運送事業の定義って何?
  • 一般貨物自動車運送事業、許可取得をする前に準備することって何?
  • 一般貨物自動車運送事業の許可取得、具体的にどんな手順でやるの?

以上のような疑問について、本ページで分かりやすく解説しました。一般貨物自動車運送事業​​の定義や、許可取得の要件・やり方に疑問を持っている方と、一緒に解決していきましょう。

本ページの最後では、弊社With.行政書士法人に、許可取得の代行依頼をした場合のメリットについての説明もしているので、ぜひ参考にしてください。

一般貨物自動車運送事業って何?許可取得の方法は?

一般貨物自動車運送事業とは、自動車(貨物車)を使って他人の荷物を有料で運ぶ事業のことです。運送事業で使用できる自動車の種類は、貨物自動車運送事業で使用される三輪以上の軽自動車、二輪自動車以外の自動車です。

(軽自動車以外の)トラックに荷物を積んで運ぶ仕事を、一般貨物自動車運送事業と考えていただければいいと思います。運送会社に所属するのではなく、自分でこの仕事を始めたい場合、運輸局、国土交通省に申請して許可を取らなくてはいけません。
手続の大まかな流れは次の通りです。

STEP
管轄の運輸支局へ申請書を提出
STEP
国土交通省または地方運輸局で審査
STEP
国土交通省または地方運輸局で許可
STEP
事業開始

このような手順を踏んで事業開始となり、国交省または地方運輸局での審査には数か月(だいたい4~6ヶ月)かかりますので、時間と金銭面の計画性が大切になってきます。

許可取得は事前準備が大事!取得要件を確認しましょう

一般貨物自動車運送事業の審査窓口は、国土交通省・運輸局だというのは前述の通りです。申請にあたっては、満たさなければならないいくつかの要件があります。

「運送事業の許可取得は、やるべきことが多すぎてどこから手をつけていいのかわからない…」
「許可取得の準備がいろいろ大変で、そのための時間が確保できない」
「本当に要件を満たしているか、自分では判断ができない」

勤務しながら、または会社で別業種を営業しながら許可取得の準備をする方が大半ですので、上記のような感想を述べられるお客様は少なくないですが、事前にどのような準備が必要か把握して、焦らず一つ一つ条件をクリアすることが大事です。

では、事前にどのような要件を満たす必要があるのか、具体的に紹介していきましょう。

営業所、車庫の確保

一般貨物自動車運送事業の申請手続きをする前に行うことは、営業所・休憩所(睡眠施設)・車庫が確保されているか、またその物件が各法律に抵触していないかの確認です。

営業所は自己所有・賃貸物件のどちらでも問題ありませんが、農地法・都市計画法・建築基準法・消防法等に抵触していない物件でなくてはいけません。
つまり、営業所の場所が農地ではないこと、住居専用地域など営業所として適さない場所は避けて、場所を選定するということです。

営業所がこれらの法律が定めた条件に合っていないと、その営業所で許可をとることはできないので、場所の選定は一番重要なポイントと言えます。選定段階で、慎重な調査が求められます。 

広さについては、営業所・休憩室は面積の規定はありません。しかし、睡眠施設を置く場所は、ドライバー1人あたり2.5平方メートル以上の広さが必要となっています。
許可取得をするには、営業所などの外観写真の提出が必要です。

都市計画法の要件とは?

基本的に、運送業許可の営業所建物が市街化区域内(☆)にあり、かつ以下の用途地域に該当しないことが要件となります。
●第一種、第二種低層住宅専用地域
●第一種、第二種中高層住宅専用地域
簡単に説明すると、住宅地にあたるところでは運送業は始められないということです。

☆ 市街化区域とは、
「すでに市街地を形成している区域及びおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域」
と定義されています。(都市計画法)

逆に、市街化調整区域という、原則として建物を建ててはいけない(市街化が抑制される)地域もあります。

まとめると、運送業の営業所を探す場合は、住宅地以外で建物を建ててOKな場所、例えば、工業地域などを探すイメージです。

実際に都市計画法に抵触しないか確認する場合は、市町村役場の、都市計画法を担当する部署に問合せます。
不動産屋さんが「この場所は大丈夫」といった場合でも、規制が新しくなっている場合もありますので、確認したほうが間違いありません。

車両

一般貨物自動車運送事業は、5台以上の使用権原があるトラックの確保、または確保予定であることが必要です。事業で認められるトラックの条件は以下になります。

  • 許可申請者が所有者または使用者として車検証に記載されているトラック(軽自動車は対象外)
  • リース会社から借りている車両でも、使用権原があればよい
  • 牽引車の場合は、トラクタ+トレーラーで1台とカウント

許可を取得しないと車両の売買契約・リース契約ができない場合がありますので、許可取得後に契約する証拠である注文書等を提出をすることがあります。

車庫

営業所に車庫が併設されていなくても問題ありませんし、自社所有ではなく借りた場所でもOKですが、車庫は以下の要件を満たしている必要があります。

  • 農地ではない(農地の場合は、農地法違反)
  • 自治体の許可なく屋根付きやアスファルト敷きにしていないか(許可のない場合、建築基準法違反)
  • 営業所に併設されていない場合、営業所との距離は適切かである(距離は地域によって異なるが5〜10km以内)  
  • 使用する車両を収容できる面積がある
    (車両と車庫の境界の間に50㎝以上の間隅が必要および車両相互間の間隔が50cm以上必要)
  • 出入口前面道路の幅員が、使用する車両に対して適切であること(幅員証明書の取得が必要)
  • 駐車場出入口が交差点や曲がり角にないこと
  • 駐車場出入口付近にバス停留所や横断歩道がないこと

以上の条件をクリアしていることが分かるように図面等を作成し、車庫の写真と合わせて提出する必要があります。

人員

一般貨物自動車運送事業を行うには、トラック台数分の人数を確保しなければなりません。車両の要件として5台以上必要なので、ドライバーも5名以上となります。
その他にも、安全に業務を遂行するため、次のような人員が必要です。

  • 運行管理者 運行管理者試験に合格した人
  • 運行管理補助者※任意)
  • 整備管理者 整備士資格または実務経験+研修受講が必要
  • 整備管理者補助者※任意)

運行管理補助者と整備管理補助者の選任は義務ではありませんが、運行管理者・整備管理者が休日や病気・ケガ等で不在にすることが考えられますので、なるべく選任したほうが安心です。

運行管理者以外はドライバーと兼任できるので、最低でもトラック5台分のドライバー+運行管理者の合計6人が運送業開始時に必要です。

事業開始資金の確保

事業を開始するのに必要な資金とは、運送業をスタートするために必要な資金と、業務開始から6ヶ月間(項目によっては1年間)業務を継続するのに必要な金額のことをいいます。

人件費役員報酬、従業員給与、賞与、法定福利費等の6ヶ月分
車両費購入価格、リースの場合はリース料金1年分
建物・土地取得費または使用料建物・土地の購入時頭金+ローン1年分、賃貸の場合は賃貸料1年分
車両保険料自賠償保険料、任意保険料にかかる費用各1年分(事業用の保険料)
税金環境性能割、自動車重量税、自動車税にかかる費用各1年分
修繕費車両修繕費、タイヤチューブ代6ヶ月分
燃料費、油脂費ガソリン台6ヶ月分
登録免許税12万円(新規許可取得時)
備品・必要経費営業所に設置する机や椅子、その他設備や備品、 営業所に必要な光熱費

上記の金額的に加えて、申請時には必要資金の調達方法も記載します。
不動産や車両を自前で用意するのか、借りるのかによっても金額が大きく変わってきますので、資金を用意できるかどうかが大きなターニングポイントになります。

欠格要件に該当しないこと

役員の欠格事由については、貨物自動車運送事業法第5条に規定されています。
要約すると次の通りです。

  • 1年以上の懲役・禁固刑が終わってから5年を経過していない
  • 一般貨物自動車運送事業(または特定貨物自動車運送事業)の許可取消しの行政処分を受けた日から5年以上経過していない。別人格の法人だとしても、親会社やグループ会社等、親しい間柄の法人が許可取消になったときも同様の扱い。
  • 一般貨物自動車運送事業(または特定貨物自動車運送事業)の行政処分により許可取消しの処分になる前に事業を廃止した場合で、その日から5年経過していない

例えば、許可を持っている運送会社の社長が複数の会社を経営していたり、複数の会社の取締役に就任している場合をイメージしてください。なにか法令違反をして一社で許可取消になってしまうと、一定期間(現在は60日)経過しないと、別会社でも許可が取得できないということになります。

書類の作成・提出はどうすればよい?

ここまで運送業許可を取得するための要件や流れを説明しましたが、要件をクリアできそうだということになれば、実際に申請書類を作成します。

運送業許可を申請する際の必要書類

運輸支局の担当窓口に提出するために作成したり、収集する大まかな書類は次のとおりです。

  • 許可申請書、事業計画書
  • 求積図などの図面関係、写真
  • 不動産の賃貸借契約書や売買契約書、履歴事項証明書など
  • 車両の車検証、リース契約書、見積書など
  • 残高証明書
  • 幅員証明書
  • 法人の定款や登記簿謄本、決算書
  • 欠格事由に該当しない旨の誓約書

申請者が個人か法人かによって提出書類は変わります。また、営業所や車庫の設置を計画している場所や、保有する車両によって申請書の書き方、揃える書類は様々です。
申請時には、分厚い申請書の束ができあがることになります。

運輸局に申請

実際に申請書、添付書類が揃ったら、管轄の運輸支局に申請を行います。
審査期間は、約4~6ヶ月程度です。
窓口で受理されても、あとから補正を求められることがありますので、許可が出るまで油断は禁物です。

役員法令試験の受験

申請した会社の役員は、申請した月の翌月以降の奇数月に、役員法令試験を受験し合格しなければなりません。
試験の確定日は申請した後日、書面で知らされます。
受験した役員法令試験が万が一不合格だった場合、さらに2ヶ月後に再試験を受けることが可能です。再試験も不合格になると申請を取り下げなければならなくなってしまいます。
過去問などで出題傾向を把握し、万全の態勢で臨みましょう。

許可書交付式の出席&登録免許税の納付

無事に新規許可の審査を通過した場合、運輸局の担当者から貨物自動車運送事業の許可取得の連絡が来ます。
後日、許可書交付式へ出席して注意事項の説明を受けたり、許可証を受け取ります。
また、このタイミングで登録免許税を納付します。

許可が出たから営業開始できる、と思いきや、まだやることが残っていますので注意が必要です。

運行・整備管理者選任届の提出

運行管理者および整備管理者選任届の提出をします。
運行管理者は、事業開始時車両台数が5台の場合は1名でOKですが、車両30台ごとに1名ずつ増えていきます。
事業拡大に伴って営業所を増設する場合は、各営業所に1名以上を置く必要がありますので、新しく営業所を出したい場合は検討が必要です。

運行管理者の役割とは?

国交省のHPには、「運行管理者は、事業用自動車の安全運行を管理するスペシャリスト」という記載があり、国家資格となっています。
具体的には、
事業用自動車の運転者の乗務割作成
休憩・睡眠施設の保守管理
運転者の指導監督
点呼による運転者の疲労・健康状態等の把握や安全運行の指示等
を行うこととされています。(国交省令より)

運輸開始前の確認(社会保険への加入)

許可が決定しても、雇用保険や社会保険にドライバーが加入しなければ実際の運輸開始はできません。
社会保険等加入の手続きを行い、加入したことが分かる書類を提出します。

・社会保険・労働保険加入届の写し
・ドライバーの運転免許証

法人は社会保険への加入が義務付けられていますので、役員や1週間に30時間以上働く従業員は、運送事業者でなくても社会保険加入しなければなりません。
しかし、運輸開始前に確認されるのはドライバーについての社保加入となっていますので、例えば運送事業に関わらない別事業の従業員は確認されません。
ドライバーでも、1週間に30時間未満の勤務予定の人は、社会保険へ加入していなくても運輸開始できます。(雇用保険は1週間に20時間以内)

緑ナンバーへの変更手続き

運輸開始前の確認を提出して受理されると交付してもらえるのが、事業用自動車等連絡書です。
この連絡書は、運送事業者の保有する自動車を「事業用」車両として登録する際に必要です。

運送業担当の輸送部門が、「この事業者は運送事業者ですから、緑ナンバー発行してくださいね」と自動車登録部門に伝達する書類のイメージです。

自動車の所有状況(自社所有orリースor新規購入)によって、ナンバー発行手続きの必要書類、やり方が違ってきますので詳細は割愛しますが、新しく発行される車検証は、「自家用・事業用の別」という欄が「事業用」となり、緑ナンバーが発行されます。

運輸開始届の提出、いよいよ運輸開始

許可を受け緑ナンバーが交付されたら、すぐ運輸開始しなければいけないわけではなく、許可が出てから1年以内に開始すれば問題ありません。
事業用の自動車任意保険に加入し、運輸開始届を管轄の運輸局へ提出して、実際の運輸を開始します。この際、車検証の写し・自動車任意保険証券の写しも添付する必要があります。

残業が発生しそうな場合は36協定書を労働基準監督署に提出し、写しを運輸支局にも提出しますが、実際に運輸開始する頃に合わせて提出するとよいと思います。

運賃表を作成し、運輸開始届と同時か近いタイミングで提出します。

事業を開始しようと思ってからここまで、かなり長い道のりでしたが、すべての提出が完了したら、実際の運輸開始、事業スタートとなります。

変更事項が発生した場合には都度手続きを忘れないように注意が必要なのと、1年に1回実績報告を提出することを頭にいれておきます。

一般貨物自動車運送事業​​の手続きは大変!困った時はWith.行政書士法人にご相談を

以上、一般貨物自動車運送事業の許可取得に関する、一連の流れについて説明しました。今回の説明で分かったことは、一般貨物自動車運送事業の許可取得は、他の仕事をしながら、または経営をしながらでは対応が難しいということではないでしょうか。

申請をしてから審査結果がわかるのが最長6ヶ月、その間に役員法令試験の受験など、手間もかかります。

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上記のようなケースで、許可取得のための手続きが始められない!という人は、ぜひWith.行政書士法人にご相談ください。弊社は書類の準備および作成、申請手続きなど、面倒な一連の作業をすべて代行します。

また、事業前後の運送業に関する疑問や悩みがあっても、専門家の視点から的確なアドバイス・サポートをすることが可能です。

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ご相談方法は、お客様のご希望により対面、電話、メール、zoom等で対応していますので、事務所に出向く時間がない方でもご安心ください。
弊社は基本的に平日のみ営業していますが、あらかじめ日程をご相談いただければ土日でも対応できる場合があります。
また、運送業許可申請に関してのご相談は無料で受け付けていますので、まずはお気軽にご連絡ください。

まとめ

一般貨物自動車運送事業の許可取得をすれば、社会的な信頼度がアップして業務の幅も広がるなど、多数のメリットがあります。

しかし、運送業界に詳しい人であっても、一般貨物自動車運送事業の許可取得は複雑で、誰でも簡単にできるものではありません。

数多くの書類を準備する手間もありますし、役員法令試験の合格率は50〜80%ともいわれているので、事前にしっかりと対策をする必要があります。

今回の記事は、一般貨物自動車運送事業の許可取得における必要事項・流れを、簡潔にまとめてみました。許可取得における大事なポイントは以下の通りです。

  • 一般貨物自動車運送事業の許可取得の方法、許可要件
  • 一般貨物自動車運送事業​​の許可取得に向けて準備すること
  • 一般貨物自動車運送事業の許可取得の具体的な手順(必要書類など)

一般貨物自動車運送事業は時間・知識・資力が必要な許可になります。
運送業事案の経験豊富なWith.行政書士法人にご相談いただければ、準備段階から許可取得後まで安心してお任せいただけます。お気軽にお問い合わせください。