運送業許可で融資を受けるにはどうしたらいい?融資を受けるメリット・審査の注意点などを解説!

運送業で独立したい、もしくは、他業種からの参入を検討されている方からご相談を受けた際に必ず確認させていただくのが、資金要件についてです。

運送業を自社で営む際には、トラックとドライバーさんの確保、営業所の確保、日々の燃料代や経費等お金周りの工面に加え、運送業許可の取得や維持管理など、手続きも必要になります。

運送業を経営していく際に強い味方となってくれるのが、銀行などの金融機関が行っている融資です。本ページでは、運送業許可における融資に関して、次のようなポイントを説明しています。

  • 運送業許可の取得とは?
  • 運送業許可では融資を受けられる?
  • 運送業許可における融資のメリット・デメリット
  • 融資の種類および融資を受ける際の注意点

本ページの最後では、弊社With.行政書士法人​​に融資についてご相談した際のメリットについても紹介しています。ぜひ参考にしてください。​​

運送業許可の定義

運送業許可とは、一般貨物自動車運送業を行うための許可です。法律では難しく書いてありますが、一般貨物自動車運送業を簡単に説明すると、以下のようになります。

トラックを使って、依頼人(荷主)が指定する荷物を有償で運ぶ事業

有償で荷物を運ぶ事業は、地方運輸局(または国交省)から許可を取得しないと営業できません。その許可が一般貨物自動車運送業許可です。

ちなみに、軽トラや軽バンで荷物を運ぶ場合は「貨物軽自動車運送事業」(いわゆる軽貨物)にあたりますので、一般貨物自動車運送業で軽トラ・軽バンを使用することはできません。一般貨物のナンバーは緑、軽貨物のナンバーは黒なので、ナンバーをイメージすると分かりやすいかもしれません。

運送業許可は、大まかに次のような手順で申請を進めます。

  1. 管轄の地方運輸局へ申請(必要書類を揃えて提出)
  2. 役員法令試験の受験
  3. 役員法令試験および運輸局の審査を通過したら、許可証交付
  4. 運行開始前に必要な各種書類の提出(運行管理者・整備管理者選任届等)
  5. 事業用自動車等連絡書の交付、営業ナンバー(緑ナンバー)の取付
  6. 運行開始

運送業許可取得前に、融資は受けられる?

運送業の許可を取得するためには、開始のために必要な資金があることを証明する「残高証明書​​」を提出しなければいけません。残高証明書は、預金先の金融機関に申込するとが発行してもらえます。

運送業を始めるにあたっての資金の内訳は次のようになり、月々かかる費用については最低6ヶ月分を準備しておく必要があります。

  • 人件費(社会保険料も含む金額)
  • 車両費(購入費用やリース料)
  • 営業所その他の場所を借りるための費用(賃貸する場合)
  • 備品代
  • 各種税金
  • 登録免許税
  • 燃料費、保険料、修理費等のランニングコスト

このように多額の資金が必要になるので、手元に十分なお金のない人は銀行などの金融機関からの融資を検討することと思います。
残高証明書に記載される金額は、借入した金額が含まれていても問題はないのですが、実際は、運送業許可の取得をする前に、金融機関で融資審査に通過することはほとんどありません。
なぜなら金融機関は、許可を持っていることを前提に融資をするからです。
役所の窓口に申請すればだれでも許可を取れるわけではないので、許可を取得しないと審査の土俵に上がれないと言わざるを得ません。

例えば、別事業を運営していて、取付けた借入金を運送業に回すようなことも考えられなくはありませんが、一般的に言えば運送業の許可を取得したい場合は自己資金を準備する必要があり、スタートアップの大きな壁となってしまいます。

運送業許可の融資、準備はどのタイミングがベスト?

許可取得前の融資は借入可能性が低いことは前述しましたが、では許可取得後にすぐ融資を受けたい場合、借入準備はどのタイミングで行えばいいのでしょうか。運送業許可取得の段階から融資を検討する際には、以下のようなタイミングでの融資の申し込みパターンが想定できます。

  1. 運送業許可申請のための手続きと一緒に融資の準備をする
  2. 許可申請が滞りなく進んで許可取得できる見込みが立ってから融資の準備をする
  3. 運送業許可の取得が完了してから融資手続きの準備をする

1.のタイミングの場合、運送業許可の取得をしていない状態であり、事業すら開始していない状態です。先述した通り、許可を取得していない状態だと、金融機関は融資の対象として認めてはくれず、融資を受けるのはほぼ不可能です。

3.の場合は、本格的に事業を開始するタイミングなので、その準備に追われることになります。事業開始直後に考えられるのは、営業所への引っ越し、トラックのナンバー変更、各種契約などです。加えて、運行開始後は日々の配車や点呼、事務作業が発生します。その忙しさに加えて、手間のかかる融資の手続きをするのはなかなか大変といえるでしょう。

そのため、運送業許可の融資手続きは、2.運送業許可の取得見込みが立ったタイミングから準備を行うのがベストといえます。許可交付になった時点で、すぐ申し込めるとスムーズです。

融資を受けるには、事業計画書の作成や書類収集など手間がかかります。かといって早すぎる時期に行っても無駄足になってしまう可能性があるので、タイミングをはかって準備を行いましょう。

運送業許可の融資を受けるメリット・デメリット

金融機関から融資を受けることについて、事業の経験が少ない人ほど抵抗感を持っていることがあります。「事業が失敗して返済できなくなるのが怖いから、利用したくない」という人もいるかもしれません。
お気持ちは分かりますが、運送業に限らず事業をしていて融資を受けることは、デメリットばかりではないのが事実です。
事業をする上で、資金に余裕があるということは大変メリットのあるものなので、少しでも資金調達に不安がある人は利用したほうがいいでしょう。

もちろんメリットだけではない点も存在するので、融資の申請を検討する段階で把握することが大事です。

では、融資にはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。

融資を受けるメリット

金融機関から融資を受けるメリットは、大きく次の2点です。

メリット1 必要な資金を短期間で用意できる

融資のメリットの一つは、必要な金額を自分でコツコツ貯めるより短期間で用意できる点です。業種にもよりますが、事業には元手が必要になることが多いので、ある程度まとまった金額を準備できるほうが営業上有利です。
もちろん自己資金で時間をかけて貯めるのは悪いことではありませんが、資金が貯まるまで次のステップに移行できないとなると、成長のスピード感が鈍ることはご想像いただけるかと思います。

また、融資を受けて余裕を持つことができたら、先々の事業の予定も立てやすくなるでしょう。また、必要な金額だけ用意できるので、資金難に陥ったり無駄使いする心配もありません。

メリット2 今後の実績になる


融資は、申し込みをすれば誰でも借りられるわけではありません。返済能力があると金融機関が判断して成立するものです。つまり、借入ができたということは、金融機関から将来性を認めてもらえた、社会的に信用されているという証拠にもなると言い換えることができ、今後の事業においてプラスになります。

さらに、借りた金額を約束通り毎月返済することで、徐々に金融機関との信頼は高まっていきます。
決算が完了したタイミングで金融機関に事業報告をする、借入だけではなく、会社のお金周りの相談などをすることで、金融機関に社長の人となりを分かってもらえるようになれば、追加融資や借り換えはグンとスムーズになります。

コラム 資金の借入先金融機関は一か所がいい?

事業を始めた段階では、通常一か所の金融機関から借入をすることが多いと思います。
追加融資を検討する際、取引のある既存の金融機関以外の銀行等に相談してもよいのでしょうか?
なんとなく、裏切っているような、後ろめたい気持ちになりますよね。

実は、金融機関からすると、別の銀行等と取引されるのは全然問題ないそうです。取引先に成長してもらえるほうが、金融機関にもメリットなのかもしれません。

事業者側からしても、借入先を複数にしておいてリスク分散しておくのはいいことですし、複数の銀行から、違った目線でアドバイスしてもらえるのもメリットになります。

融資を受けるデメリット

融資を受けるデメリットは、次の2点です。

デメリット1 利息が発生する

融資を受けると、利息が発生します。例えば日本政策金融公庫の場合、創業融資の利息はだいたい2%位のことが多いですが、制度や条件によって変動があります。一か月に均すと大きな金額ではありませんが、借入期間をトータルすると数十万となります。
ただ、資金に余裕が出てビジネスが円滑に進むと考えると、デメリットとは言えない面もあるかもしれません。

デメリット2 自己資金がいくらあるか分からなくなる

運転資金の名目で融資を受けると、その時点では資金が潤沢になり気が楽になります。
しかし、資金が潤沢になったことで、自己資金がたくさんあると錯覚しないように注意が必要です。

当たり前ですが、借入した金額は毎月少しずつ返済しなければいけません。
自己資金、借入金を分けて考え、手持ち資金をうまく使って利益が上がるようにする努力が必要です。

特に、毎月の赤字に融資額を充て、なにもアクションを起こさないまま預金残高が減っていくのはとても怖いことですので、融資を受けたことによって会社が強くなるような経営方針を取っていただければと思います。

金融機関の選び方・融資の種類

運送業向けの融資制度というものが特化してあるわけではないので、他業種と同じ制度を利用することになりますが、おすすめしたいのは日本政策金融公庫の「新創業融資制度」です。

日本政策金融公庫とは?

政府が出資して設立された政府系の銀行です。
「中小企業事業」を行っており、99%以上が中小企業である日本の経済を融資によって安定させる役割があります。政府系ということで、災害時などはセーフティネットにもなります。新型コロナウイルス感染拡大によって取扱融資額が大幅に増加し、コロナ前と比べて4倍以上の貸出額となっています。
また、法人を立ち上げたばかりで実績のない会社には、民間の金融機関はなかなか貸し出しにくい面があるので、その面を補完すべく創業時の融資制度があります。

日本政策金融公庫は、通常の金融機関と違って口座開設ができません。
よって、公庫への返済は民間の金融機関の口座から支払います。

新たに事業を始めて7年以内であれば、新規開業資金として申込みが可能です。さらに、税務申告を2期終えていない場合は、新創業融資制度を利用し、無担保・無保証で借入ができる可能性があります。(どの制度を利用して貸付するかは、公庫側の判断になります。)
資金の使いみちは、設備投資、運転資金を問いませんし、両方でも大丈夫です。ただし、設備資金として借入した場合は、契約書や領収書等を購入後に提出します。
返済期間は金融公庫との相談になり、金額によってもことなりますが、5年~7年のことが多い印象です。

その他の銀行・信用金庫

創業時は日本政策金融公庫しか融資をしてくれないかというと、必ずしもそうではありません。
いわゆるメガバンクや、地方銀行の中でも大手は実績を出さないと相手にしてくれないことが多いですが、地元の銀行または信用金庫だと、親身になって相談に乗ってくれることがあります。
金融機関それぞれで対応が異なりますので一概には言えませんが、まず相談して感触をつかんでみることをおすすめします。先述した通り、事業を継続していく上で金融機関との関係性は大事になりますので、普段から付き合える銀行を見つけておくと経営上有利と言えます。

融資をスムーズに受けるためのポイント

運送業許可に限らず、融資を円滑に実現するためにはどのようなポイントを押さえておけばいいのでしょうか。融資における大事なポイントを紹介します。

融資までの流れを把握しておく

融資申込の手続きや融資実行される時期の目途をつけるためにも、流れを把握することが大切です。
日本政策金融公庫に申し込む場合の流れとスケジュールは以下の通りです。

STEP
事業計画書の準備

ご自分の事業について、金融公庫の担当者に把握してもらうために作成するのが事業計画書です。経営者の経歴、サービスの特徴、資金計画等、事業に関することをもれなく記載します。
どのような根拠で売上の予測を立てているかという部分もとても大切ですので、運賃や距離を用いてなるべく具体的に金額を算出しましょう。人件費や車両の修理代をいくら見込んでいるかをはっきり提示することも大切です。

STEP
金融公庫に連絡して、初回相談の申込み

借入れ申し込みを希望している旨を伝えます。事業の概要を聞かれることがあるので、答えられるようにします。

STEP
担当者と面談

始めて借入をする場合は、必ず担当者との面談があります。事業を開始した動機や、資本金・許可取得時の資金をどうやって工面したかなどを聞かれることが多いです。
特に、自己資金をどうやって貯めたか重視され、「開業目指してコツコツ貯めた」のが一番心証がよいのですが、運送業はスタート時の資金がたくさん必要なので、「親(親族)から借りた」も全額でなければOKです。
経営者自身の懐事情まで探られることもあります。

STEP
追加書類の提出や現地確認

追加書類が必要な場合は提出を求められます。本社の場所や営業所に担当者が訪問することもあります。

STEP
審査

金融公庫内部で審査が行われます。審査機関は3週間~1か月程度です。

STEP
融資決定

融資が決定したら、指定した口座に手数料などが引かれた金額が振込みされます。

事業開始直後は融資を受けやすい!

融資を受けるには事業実績を積んだ方が審査に通りやすいように思いますが、実は事業開始してから1期目の決算が終わるまでのタイミングは、融資を受けやすい傾向にあります。
法人設立や開業したてでまっさらな状態のほうが、事業を複数年おこなって赤字・業績が良くない場合より印象が良いということが言えるからです。

運送業を営んでいて融資を考える場合は、開業してから許可取得までに時間がかかりますので、許可が出てすぐ、1期目の決算到来前のタイミングで融資申込ができるように事前準備が必要になります。

実際の運行開始と融資申込が同時期になる可能性もあり、手続きで忙しくなることが予想されますので、専門家にサポートを依頼することも検討しましょう。

融資に関するご相談はWith.行政書士法人​​へ

運送業許可の取得および運送業に関する融資の申請は、さまざまな種類の必要書類を作成しなくてはいけません。
特に重要なのが、融資の時に提出する事業計画書の作成です。事業計画書の作成においては、次の7つの重要ポイントが挙げられます。

  1. 自社の特色、他社との違い・独自性を説明し差別化をはかる
  2. 経営者の経歴および事業開始の動機を具体的に記載
  3. 開業までに綿密な計画・準備をしてきたことをアピール(資金計画も含む)
  4. 市場調査など、事業を取り巻く客観的な情報を提示
  5. 売上計画および経費計画を、説得力のある根拠をもとに計算
  6. 「設備資金」と「運転資金」を分けて資金計画を立てる
  7. 滞納・延滞のない確実な返済計画、キャッシュフローを提示

上記のような点が事業計画書の作成において重要です。
しかし、初めて事業計画書を作成する場合は、どこから手を付けてどのように作成していいのか分からないですよね。また、業務に追われながら事業計画書の作成に時間をかけるのは負担が大きく大変です。

このように、運送業の融資に関してお悩みをお持ちの方は、With.行政書士法人​​へご相談ください。
弊社では運送業許可の取得をサポートするだけではなく、事業計画書の作成を始めとした融資に関する手続きを代行することが可能です。

既に運送業を始めているお客様からの経営に関するご相談・各種手続きに関するご相談も受け付けておりますので、お悩みの方は一度お気軽にご連絡ください。

まとめ

運送業許可を取得して事業を開始すると、「社会的信用度が上がる」「業務内容の幅が広がり売上がアップする」などの利点が考えられます。
しかし運送業は、許可を取得して事業を開始した後もゆとりある資金が必要となります。その資金をすべて自分で用意できれば問題ありませんが、自己資金のみで回していくのは難しいと頭を悩ませている人もいるのではないでしょうか。

そんな時に検討すべきは、金融機関からの融資を利用することです。本ページでは、運送業許可における融資について、以下のことを解説しました。

  • 運送業許可の定義
  • 運送業許可取得前に、融資は受けられる?
  • 運送業許可の融資、準備はどのタイミングがベスト?
  • 運送業許可の融資を受けるメリット・デメリット
  • 運送業許可における融資の種類
  • 融資をスムーズに受けるためのポイント

ぜひ、しっかりと融資の流れをつかんでいただき、運送事業を成功させていただければと思います。
もし手続きや経営について不安がある場合は、運送業に関する事案を数多く手がけてきたWith.行政書士法人にお任せいただければ、運送業許可および融資の準備から手続きまで、スムーズに代行できます。

ご相談は、対面や電話はもちろん、ZOOMやメールでも受け付けているので、お気軽にお問い合せください。
初回のご相談は無料となっております。

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