トラックで荷物を運搬して報酬を得る、いわゆる運送業の正式名称は「一般貨物自動車運送業」です。この事業はトラックさえ所有していれば誰でもできるものではなく、営業するための許可を取得する必要があります。
今後、運送業を始めようと検討している方、許可の取得をお考えの方は、許可取得後に必要な手続きについても把握しておくと安心です。
例えば、運転免許取得後の数年後には必ず更新の手続きをする決まりがあるように、運送業の許可にもそのような手続きがあるのでしょうか。
そのような疑問を解消してもらうために、本ページでは以下のような点について詳しく解説しています。
- 運送業の許可を取得せずに事業を開始したらどうなるのか
- 運送業許可に更新の手続きはあるのか
- 運送業許可取得後にやるべき手続きはあるのか
これから運送業の許可取得を検討している方・許可取得後に何をやるのか知りたいという方は、本ページで一緒に疑問を解決していきましょう。
なお、本ページの最後では、弊社With.行政書士法人にご相談した際のメリットについての説明もしています。ぜひ参考にしてください。
運送業の許可、取得しないで事業をするとどうなる?
運送に関する事業である一般貨物自動車運送業は、「貨物自動車運送事業法」という法律によって管理されています。管轄は国土交通省です。
この法律で決められた運送業許可に関する違法行為は、以下の通りです。
- 許可を取得せずに事業を行う 一般貨物自動車運送業の許可取得をせずに運送業を行った場合、懲役3年以下または罰金300円以下の処罰
- 名義貸し 許可を取得していない人が他の運送会社の名義を借りて業務を行い、それが発覚した場合は懲役3年以下、または罰金300円以下の処罰
- 運行管理者を選定していない 運送業に必要不可欠な運行管理者の資格所有者が不在なのが発覚した場合、罰金150万円以下の処罰
運送業の許可を取得しない状態で事業を開始すると、上記のような思い処罰が待ち構えています。
日常的に運転する業務なので事故が起きる可能性が高いことや、お客様の荷物を預かるということを考えると、必ず許可取得をしなければいけません。
運送業許可、更新は必要?
運送業許可を取得した場合、許可の期限を継続するための更新手続きは必要なのでしょうか。
答え 運送業許可に期限はなく、更新は不要!
一般貨物自動車運送業の許可取得を行う際は、多様な種類の必要書類の作成・準備、各種手続きをしなくてはいけません。
決して簡単ではない手続きをクリアして取得した運送業許可なので、許可には数年規模の有効期限が設けられていて、その期限が迫ってきたら更新の手続きでまた手間がかかるのでは、と思っている人もいるかもしれません。
結論を言うと、運送業の許可には更新の制度は存在しません。更新のために担当窓口に足を運んで手続きをしなければいけないと考えている人もいるでしょうが、そのようなことは一切不要です。
一般貨物自動車運送業の許可には期限というものがないので、一度取得してしまえば、許可取り消しなどにならない限り運送業を行える権利を得られます。
ただし、運送業の種類のなかでも、貸切バス事業である一般貸切旅客自動車運送事業には、5年の有効期限が存在するので、有効期限以降も事業を継続する場合は更新手続きをしなくてはいけません。
運送業の事業開始後にやるべき手続きとは?
更新の制度がない運送業許可ですが、運動業を事業としてスタートした際、毎年提出しなければいけない2種類の報告書があります。名称が似ていて分かりにくいですが、大まかにいうと以下のようになります。
運送業者には、巡回指導・監査がありますので、未提出の場合は必ず指摘が入ってしまいます。毎年忘れずに提出しましょう。
毎年提出が必要な報告書と大まかなイメージ
- 事業報告書…会社の決算状況について、毎会計年度に報告
- 事業実績報告書…運送事業の概況について、毎年7月に報告
貨物利用運送事業法第65条によると、これらの書類が未提出だった場合100万円以下の罰金となる場合があると記されています。提出期日が迫っていても「◯月◯日までに提出」という連絡が役所側から来ることはないので、自身で忘れないように期限管理して報告書作成・提出をしなければいけません。
この2つの書類、事業報告書と事業実績報告書はどのような内容のものなのか、もう少し詳しく説明します。
事業報告書
事業報告書とは、毎年決算期を迎えたあとに、決算内容、つまりお金の部分をまとめて報告する書類です。
記載内容 | ・事業所の従業員および運転手の人数 ・営業収益 ・営業費用 ・人件費 |
提出先 | 事業所を管轄する運輸支局・輸送担当窓口 |
提出期限 | 毎事業年度の経過後100 日以内 例 3月末決算の場合、7月上旬までに提出 |
事業報告書の構成は次のようになっています。
- 表紙 事業者番号、会社情報(住所や代表者など)、決算期間、事業種別を記載
- 事業概況報告 株主・役員構成、事業の売上構成比率、業種ごとの従業員数を記載
- 一般貨物自動車運送事業損益明細表 運送業における営業収益(運賃)、営業費用(燃料代、修繕費、減価償却費など)、営業外収益、営業外費用を記載
- 一般貨物自動車運送事業人件費明細書 人件費、法定福利費を記載
- 貸借対照表、損益計算書、注記表など財務諸表を添付
決算書から、運送事業にかかる売上や経費を割り出して記載します。運送業のみを経営している場合はさほど難しくありませんが、別事業を営んでいて兼業売上がある場合は、数字の振り分けが必要になりますので難易度があがる印象です。
事業実績報告書
事業実績報告書(正式名称は貨物自動車運送事業実績報告書)とは、所有している車両の台数や走行距離、運送した量など、運送業に関する事業実績を報告する書類です。
記載する内容 | 車両の台数、従業員数、取扱い貨物、延実在車両数(日車)、延実働車両数(日車)、走行距離、実車距離や輸送トン数、営業収入、交通事故数など |
提出先 | 事業所を管轄する運輸支局・輸送担当窓口 |
提出期限 | 毎年4月1日~3月31日の事業実績を7月10日までに報告 |
事業報告に記載されている専門用語について説明します。
延実在車両数… 緑ナンバー車が存在した延べ日数 稼働しなかった日があったとしても計算に含めます
延実働車両数… 実働した緑ナンバーの延べ日数
走行キロ… 緑ナンバー車の走行距離(荷物を運んでいない距離を含める)
実車キロ…緑ナンバー車の走行距離(荷物を運んでいない距離を含めない)
輸送トン数(実運送)… 輸送したトン数
輸送トン数(利用運送)…外注して輸送したトン数
走行距離や運んだ荷物の重さなど、分かるわけないよー!という声が聞こえてきそうですが、集計して報告しないといけないので、毎日管理して集計できる体制、設備を整えておく必要があります。
運送業専用の管理システムを利用している運送業者も多いと思います。
多種多様な管理システムがありますので、自社に合うものを探してみると、コストと手間の削減になるのでおススメです。
各種変更の際も手続きが必要
運送業許可の取得後に、営業所や車庫などに変更があった場合は、管轄の運輸支局に変更手続きが必要です。変更手続きには、変更認可申請と変更届の2種類があります。
この2つの違いは、変更内容が事業計画書に記載されている事項についてのものかどうかです。
事業計画書に記載されている事項についての変更は認可申請、それ以外の変更事項については届出になります。
変更の名称 | 手続きしてから処理されるまでの期間 | 手続きする場所 |
変更認可申請 | 1〜3ヶ月 | 事業所を管轄する運輸支局・輸送担当窓口 |
変更届 | 届を出した即日 | 事業所を管轄する運輸支局・輸送担当窓口 |
変更認可申請・変更届の具体的な手続内容は次の通りです。
変更認可申請
・事務所、営業所の変更 事務所、営業所の登録上の名称や所在地に変更があった場合 ・休憩、睡眠スペース 休憩・休眠施設の位置や広さに変更があった場合 ・車庫 車庫の位置、広さに変更があった場合 ・運賃の変更 ・霊柩車事業 一般貨物自動車運送業に該当している霊柩車事業を行う場合 ・利用運送営業所の新設 運送事業者が、利用を運送を新しく行う場合 ・事業の譲渡および譲受、事業の合併または分割 事業者の営業を全部または一部を他社へ譲渡および譲受する場合、新設合併および吸収合併、新設分割および吸収分割する場合 |
営業所変更や車庫の新設・移転といった手続きは、新規で許可を取得する際に提出した事業計画の変更になり、変更認可申請に該当します。
手続きにかかる期間は、提出してから運輸支局での審査で約3か月程度となります。
営業所、休憩・睡眠施設、車庫の3項目の変更は、新規許可と同じく認可には厳しい制限がありますので、場所の選定及び契約段階から十分に注意する必要があります。
変更届
・営業所の住所変更 (運輸局長が指定する区域内の場合) 事後届出 営業所の住所変更 (認められた区域外)は認可 ・役員の変更、追加、退任 事後届出 ・車両台数の増減車 台数によって異なる ・運行管理者または整備管理者の選任・解任 事後届出 |
上記のような、事業計画に変更をきたさない事項は変更届を提出すれば済みます。変更届が受け付けられれば手続きは完了です。ただし、変更届には、事前に届出るものと、事後の届出でよいものがありますので注意が必要です。
届出不要の手続き
運送業において、変更がありながらも変更手続き不要の項目もあります。
手続きのいらない変更事項は以下の通りです。
・運転手、従業員の雇用および退職があった場合 ・運行管理者補助者に変更があった場合 ・整備管理補助者に変更があった場合 ・運行管理規定に変更があった場合 ・整備管理規定に変更があった場合 ・帳票類(日報、点呼簿など)に変更があった場合 |
以上の変更は変更の報告をする必要はありません。変更の手続きをしなければいけないこと、しなくてもよいことは何か、把握しておくことが大切になります。
運送業許可や事業報告に関するご相談は、With.行政書士法人へ
ここまで解説してきた通り、運送業を開始してから提出・手続きが必要なものは、事業報告書・事業実績報告書・変更認可申請・変更届の4種類です。
運送業を開始した直後はさまざまな実務に追われて忙しい日々を送り、なおかつ経験もあまりないことが多いので、運送事業者としてやらなければいけないことを忘れてしまいがちになります。
- どんな申告手続きが運送業にとって必須なのか分からない
- 手続きに関する書類の種類や作成方法が分からない
- 変更認可申請と変更届の区別が付かない
上記のようなことに頭を悩ませている事業者の方は、是非With.行政書士法人へご相談ください。弊社は、運送業、建設業や産業廃棄物処理業、そして自動車に関する業務に強い行政書士事務所です。
With.行政書士法人にご依頼いただくメリット
なにか困ったこと、不安なことがあったらまずWith.行政書士法人に相談していただければ大変ありがたいです。
料金について
弊社に手続きをご依頼いただく際の料金は以下の通りです。
手続き代行の種類 | 報酬 |
変更認可申請(営業所新設) | 132,000円から |
変更認可申請(車庫新設) | 132,000円から |
事業報告書作成・提出 | 33,000円から |
実績報告書作成・提出 | 22,000円から |
上記以外にも、一般貨物自動車運送事業許可の新規取得、緑ナンバーの登録・変更などの手続き代行も受け付けています。お見積りは無料ですので、お気軽にご連絡ください。
対応地域は宮城県・福島県・山形県・岩手県・秋田県・青森県を中心とさせていただいています。もしその他の地域にお住いの場合は、お問い合わせください。
弊社With.行政書士法人へは、運送業で頑張っている方々を、しっかりとサポートいたします。
まとめ
役所への手続きは、業務と全く異質のものになりますので、慣れなかったり、必要性をあまり感じないことで後回しになってしまうことがあります。しかし、決められた手続きを期限内に終わらせておかないと、許可取り消しや営業停止、罰金などを受けることがありますので、きちんと取り組むことが大切です。
本ページでは、運送業許可を取得したあとにやらなければいけない、必須項目などについて詳しく解説しました。解説内容をもう一度振り返ってみましょう。
・本ページの内容
〇運送業(一般貨物自動車運送業)の許可取得をせずに、運送業を行った際の罰則
〇運送業許可取得後に更新手続きはあるのか
〇運送業許可取得後にやらなくてはいけないこと (事業報告書、事業実績報告書の作成および提出、変更認可申請および変更届)
運送業を開始するにはさまざまな決まり事を頭に入れておく必要があり、それに加えて運送業界には以下のような問題点もあります。
- 慢性的なドライバー不足
- 燃料費の高騰(経費の増加)
- 人手不足から節制する実務時間の問題(サービス残業など)
運送業を事業として成り立たせるためには、上記のようなさまざまな問題に取り組み、改善を心がけて働きやすい環境づくりを行うことが大事です。
運送業の運営にあたってもし行き詰まりを感じた場合、弊社With.行政書士法人へご相談ください。運送業に関するあらゆる知識とサポート実績がある弊社にお任せしていただけたら、手間のかかる一連の手続きの代行、事業に関する適切なアドバイスを行います。
ご相談者様の立場になって多方面からサポートできるのが、弊社の強みです。
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